IEW(現ICOM) FDAM-1
1964年の発売 井上電機製作所 (現ICOM)アマチュア無線分野への進出第一号の無線機です
1964年と言えば、東京オリンピックが開催された年です
まだ真空管が活躍していたこの頃、オール・トランジスタで構成した商品から事業がスタートしました

FDAM−1については、メーター2つの初期型があるようで、こちらはわずか10数台の販売だったそうです
こちらでご紹介しているモデルは後期型です
この頃の井上電機製作所は、大手メーカーの下請けなどが中心で、ディップメータなども作っていました
 
井上電機製作所/IEW/ICE 現ICOM製の50MHz帯 携帯型AMトランシーバです
同社より、アマチュア無線向け無線機として、最初に作られ販売されたものです
17石のトランジスタで構成された、オール・ソリッドステート・モデルです
当時の広告では、完成品¥25,000となっています

巾200 高さ70 奥行200mm 1950g と、かなり小型
単一電池12本を内蔵しますから、いざ移動となると実質重量は重いものになります
次世代のFDAM−2のように、ロッドアンテナの内臓は無く、M型コネクタのみ、イヤホン端子もありません
MIC横のイヤホン・外部スピーカー端子は、後からの改造です
本来、送信のクリスタルは内臓1CHのみ、改造でフロントパネルに2CH切替SWが取り付いています
アンテナ接栓の右横は、バッテリチェックボタンが取り付けられています
S/RF表示から切り替えることなく、ボタン一つでバッテリ状態を見ることができるように、です
当時は、改造するのがアマチュア無戦家のステータスです

送信は、3ステージ LPFも入っていません
発振段は、PNPゲルマ型Tr、逓倍・終段はNPNシリコン型Trの採用です
オリジナルは、クリスタル1個を内臓ですが、本機では改造して2CH切替になっています
受信は、ダブルスーパーヘテロダイン方式、とは言っても、50MHz前後の高い周波数の自励発振により1st-IF 1.9MHzに変換、そこからの2nd-IF(455KHz)への変換も自励発振(Trひとつで、Mix兼)です
親受信機は、既成の6石AMラジオであろうと思われます
この当時、クリスタルは貴重で、手持ちの周波数でCQを出して、どこで応答があるかわからない(相手がどんなクリスタルを持っているかわからない)ため受信ダイヤルをグルグル回して自局を呼んでくる相手を探す・・・今では考えられないような運用が行われていました
これは、50MHz帯に限ったことではなく、HF帯でも同様でした
VFOを使えば使ったで、「VFOですから動きます・・・」と、QRHも大きく、それでもQSOが成立する、おおらかな時代でした
もちろんAM(CW)の時代です

上下ケースが、パッチン錠でこのように開きます
蓋を開けるのに、ドライバなど工具は不要です
内臓乾電池は、単一型12本
外部電源接続端子はありません
送信終段には、18V
その他ステージは13.5V
受信関係は、9V
3種の電圧供給がなされています
電池を無駄なく使い、利得の無さは電圧で稼ぐというような設計でしょう
苦心の跡を感じます
消費電流は、極めて少なく設計されています
余談ですが、+接地です
基板上面です
後ろからフロントパネル裏側を写しています
基板は、左から
受信IF−AF基板(縦に立っている)
受信RF−MIX基板
送信基板(1枚基板で、奥側に変調部)
送受切替リレーが見えます
送信クリスタル、オリジナルは送信基板直付け1個のところ、フロントパネルに増設したSWで2個切替ができるよう改造されています
横から写しています
上に立って見える基板は、受信IF−AF基板
受信基本設計は、既成の6石AMラジオ(受信1.9MHzに固定)に、新たに設計したRF部、すなわち自励式コンバータを後付けしたものと考えられます
そのRF部は、ゆったり設計です
中央は、受信コンバータ用に採用された3連VCで、アンテナコイル、RF同調コイルの同調を変換用発振と合わせて行なうようになっています
ダイヤルの減速は、お決まりの糸掛け式です
VCの下にRF増幅Tr、後ろに第一局発Trが見えます
受信IF−AF基板です(6石AMラジオ!)
基板左端の白く見えるトランジスタが、2SA400
回路図の上に置かれているのが壊れていた、2ndMix2SA142
手前右にフロントパネルに後付けされた外部スピーカー(イヤホン)端子が見えます
基板裏側です
左から
受信IF−AF基板(縦型に取り付けられている)
受信RF−Mix基板
送信基板は1枚で、トリマが見えているあたりがRF部
その下が変調部です
     
フロントやや左上より写したもの
スピーカーはこんな位置に取り付いています
ロッドアンテナの内臓は無く、アンテナ接続先としてはM型接栓のみです
フロントやや右上から写したもの
パッチン錠は、電池交換には楽そうです
リアパネル
なにも入出力する端子はありません
消費電流は、極めて低く設計されています
送受信のAFアンプを兼用するのが一般的ですが、本機では送受分けられています
受信は、9Vの電源供給一本です
送信に関しては、13.5Vと18Vの2系統が使用されています
18Vは、終段の2SC32パラに供給、他は13.5Vが供給されるようになっています
トランジスタもゲルマ型2SA/2SB型式が多い中、送信終段はシリコン型2SC32の採用ですが、パワーを出すには18Vが必要だったのでしょう

うんもすんも言わない・・・
電池ホルダには、はんだ付け不良があり
受信基板にあっては、2ndMixトランジスタ(2SA142)がE−C間がショートしていました
幸いストックに2SA400が残っていて、代用ができました
その結果、なにがしかの受信は出来るようになったのですが、今度はIFの発振に悩まされました
一度発振すると、電源を入れなおさないと正常動作に戻りません
前オーナー?が、新たに交換したと思われるデカップリングコンデンサの半田付け不良
そして、IF段の中和Cの問題
1.5Pのところに10P
2.またもうひとつの5Pは断線
ここまでの対応では、まだ発振が生じて動作が不安定、同調を取るとビートをかけて聞いているような状態になる
そこで、これらのCの取り付け方の変更など・・・まさにアナログ対応です!
同調は、455KHz、1.9MHzと低い側から調整を進めました
なんとか動作を落ち着かせることができました

送信は、特に何の問題もなく動作しました

調整の結果
送信
   50.220MHzと50.500MHz 内蔵されていた2クリスタルで、0.5W弱
受信
   30%変調 2μV入力で、S/N8db(この当時としては、かなり高感度ではないかと思います)
   得られる音量も十分です

電源が3系統・・・単一電池12本を用意しての修理対応という元気がなく、3台の定電圧電源を使って対応しました

幸いに回路図があったおかげで、修理復旧ができました

2025.12   JA4FUQ

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