JRC JST-135
その昔、日本無線と言えば、業務用無線機の日本を代表するメーカーでしたが、今では無線という言葉が社名に付いていることに抵抗を感じるくらい、無線には疎遠な会社になってきた感があります
船舶に積む無線機が衛星電話になった、近くは「無線」・遠くは「光」と、短波帯のニーズがなくなったことの影響が大きいと思われます(Anritsu等も同様の流れの中に)
三鷹本社も、かなりの部分を、子会社の長野日本無線の敷地に移転したという話もあります
そんな変化の中で、当然ながらと言っても良いのでしょう、今はもうアマチュア無線分野向けの製品は作っていませんが、かつてあったトランシーバーのひとつです
JST-100の登場が1982年、以降 110 125 135 145(HFのみ)/245(50MHz帯を含む) と、5世代にわたって、アマチュア無線向けHFトランシーバーの歴史があります
本機は、1988年から1994年にかけて販売された4代目のものです
私も、手にしたのは初めてです(修理で、JST-245を手にしたことはありますが、本機のようなプラグイン構造ではありませんでした)

幅330 高さ130(足を含めると142) 奥行き280(フィナルユニット込みで391) 単位はmm


大きなファイナル・ユニットが目につきます

100KHz〜30MHzまでを連続カバーするゼネラルカバレッジ SSB CW AM AFSK そしてFM(29MHz帯)に対応します
コマンド操作のみで、標準の受信のみならず、送信もゼネカバに対応します(標準では、送信できるのはアマチュア無線バンドのみ)
業務用サブ機という位置付けを持たせていたのかも知れません(FT−ONEみたい)
・業務用無線機にある、フロントエンドの同調をコントロール(一般には固定のケースが多い)
・高CNのDDSを採用
・高IMDを意識した設計のパワーアンプ部(代償は、消費電力が大きいこと!)
・CWは、セミブレークインに加え、フルブレークインにも対応
・業務機にあるような混信除去機能オプションが充実(お金のかけしろがある!)
など、特徴を持ったトランシーバーかと思います

受信は、アップ・コンバージョン 1stIF:70.455MHz 2ndIF:455KHz 3rdIF:98KHz と、FMモードは、ダブルスーパへテロダイン それ以外は、トリプルスーパーへテロダイン を採用
電源は内蔵せず、外部電源装置を要します
アンテナ・チューナーなど内蔵のオール・イン・ワン・タイプではありません
その代わり、重量は、約8.5Kgと軽量です
JRC最終モデルとなった、JST-145/245は、電源やアンテナ・チューナーを内蔵したオール・イン・ワン・タイプです

トップ・カバーに、スピーカーを内蔵です
 
ご覧のように、受信機の背中に送信パワー・ユニットを背負わせたような構造です
トップ・カバーを外して撮したものです
マザ・ーボードのスロットに、必要なプラグイン・ユニットを差し込んで構成・・・このものは、オプション無しの標準モデルです(オプション用空きスロットが3つ)
基板はガラスエポキシ・・・安心できる材質です
おっと、よく見たら232cユニットがCPUボードに乗っかっています
NRD-525とのトランシーブに使っていたものかと想像されます
プラグイン・ユニットを何度も抜き差しをした・・・時に、間違って隣のスロットに差し込んで通電をしましたが、どこも壊れはしませんでした
感度低下は、アンテナの切替回路を疑って、関係箇所については半田処理を行いました
弱電界の受信において、Sメータこそ思うように振れませんが、それなりに受信ができています

恥ずかしながら、今回の取り組みでの失敗談です
上写真のように、作業テーブルに置いて作業を開始したのが、そもそもの間違いでした
一通りの取り組みが済んで数日後、最終の調整をしようとした時です、何かの拍子に、下写このようになってしまいました
ガタッと言う音と共に・・・・
ここまで、何とか正常動作と思われるところまでもってきていた本機なのですが、Un−Lock LEDが点灯し(DDS/LOOPユニット共に)、全く送受信できなくなってしまいました(IFノイズが、僅かに聞こえるだけ)

チックすると、20MHZ/2MHzの出力に問題はなく、2MHz台のDDS出力とLo/70MHz台の出力が出ていない・・・
ご覧のように、作業テーブルの縁は金属が使用されています
マザーボード上のコネクタピンを、どこかでショートしたに違いない・・・そう考えて、怪しそうなところを手当たり次第、交換してみることにしました
幸いTTL-ICは、手持ちがあります


下左半分に見えるTTL-IC 4個を交換
この際ですからICソケットを採用
せっかく、感度不良というものを何とか正常動作と思えるところまでもってきたのに、ここで壊してオシマイというのはあまりに可哀想です
エクステンション・ボードは持っていませんので、動作させたままでのチェックは出来ません
回路図をにらんで、壊れそうなところについて、総当たりで交換です(こうするしか手がありません!)
まず、DDSボードから手をつけました
マザーボードに直接つながりのあるTTL-ICについては、全て交換しました
残念ながら、交換作業が上手になっただけで、状況に変化は見られません


もっと早く気づくべきことでした!
これは困った
原因が分からないまま、粗大ゴミ/ゴミ箱行きか・・・と思ったとき、ふとマザーボードに配線された同軸ケーブルが目に入りました
ソケット・ピンに突き刺さったケーブルが・・・
写真で黒のスリーブを掛けている部分が、ソケットに突き刺さり、外皮(網線)が2つのピンをショートした形になっていました
このケーブルを浮かせて、正常に動作することを確認、熱収縮チューブで養生しました
IC交換、VCOの調整ほか色々やったことは、今回のトラブルに全く関係ありませんでした
同軸ケーブルが重なっているところを、運悪く勢いよく押さえつけてしまった、これが原因で起きたショート・トラブルでした

受信感度が低下、送信はしているようだ
こういう曰くのあったものを入手しました
JRC製(JRCらしい)トランシーバーを、目の前で見てみたかった、という自らの欲からです

独特の構造
  ・マザーボードに、スロット基板を使用するプラグイン構造
  ・受信機の背面に送信パワーユニットを背負わせたような構造
日頃良く目にするアマチュア無線機とは一線を引いた構造です
業務用無線機メーカーだから強度のある筐体、と言うことではありません、むしろ筐体の強度としては弱いと思います

とにかく、このままでは手が出しにくい構造です
エクステンション・ボードがあるのが前提になった保守・・・ここは、業務用無線機の仕組みそのものです
関係して、使い勝手は非常に悪い・・・感覚的に使えるものではありません
日頃との違い、と言うことかも知れませんが、使い勝手については、アマチュア無線的ではないと断言できます

調整は、プラグイン・ユニットをスロットから抜いては変化をさせて差し込み、様子を見てはまた抜いて・・・と言うことを繰り返しましたが、きちんと調整できたとは到底言えません
こんなところでOKとしよう・・・で、終えました
エクステンション・ボードが使える機会があれば再挑戦です


調整用エクステンション・ボード(延長ボード)
ついに?、自作しました
HIROSEからは、JRCが基板側に採用しているライトアングル・タイプ・コネクタの入手はできないことが分かり、入手できるストレート・タイプのコネクタで自作しました
従いまして、スロット・ガイドには収まりません
幅を小さく作りました
入出力の影響を少しでも回避しようと、ジャンパー配線は基板の裏/表にしました(無意味かも!)
基板は、たまたま古い手持ちがあったものを切って使いました(付いていた値札を見ると、ちょっと勇気が・・・)
背に腹は代えられません!

WEBにあった英文サービス・マニュアルの記載に沿って、出来る(読める?)範囲で調整をやってみました

写真にあるように、自作のボードは、スロット・ガイドで支持されません
マザー・ボード基板上のコネクタに刺さっているだけで、決して強度が取れているというものではありませんが、こうやって調整する分には十分でしょう
念願のIFTの調整は、これでバッチしOK、AGCアンプの調整(固定抵抗の変更)も行いました
まだ、なんとなくゲイン不足を感じます
強引に、IF最終段のQダンプ抵抗を外してみました
信号入力電圧 Sメータ表示
38dbμV
28dbμV
17dbμV
11dbμV
14MHz帯での例ですが、たちまち、こういう調整結果でOKとしました
2017.01 追記

最後にスペック・チェックです
  送信  1.8〜24.5MHz帯 100W以上
       28MHz帯   50W以上
       とにかく大飯喰らい・・・SSBで送信するだけ(アイドリング状態)で、4.5A流れます
       100W出すのに、24A〜26A以上(21MHz帯では26.5A設定の電流制限がかかる)
       純正電源の仕様が30Aのはずです
       コマンド操作のみで、ゼネカバ送信が可能に(テンキーで、周波数直接入力+VFO)
       色々やっているときに、BAND UP/DOWNで1MHz単位で変化したことがあったよう
       に思いますが、再現できません
       余談ながらゼネカバ送信対応とした場合は、全てで100W対応となるようです

  受信  スペックどおり、全バンドにおいて−10dbm(0.3μV)入力で S/N10db以上が得られました
       (7MHz帯においては、0.16μV   28MHz帯で、0.2μV )
       実際の使用感ですが、感度が悪いのか、と思うくらい静かです(ノイズに影響されない)
       15dbμV以下の弱い信号では、Sメータは振れません(40dbμVでS9に調整)
           上記、追記記事(エクステンション・ボード作成後)参照
       この状態が正常なのかどうか、よく分かりません・・・Sが振れないと、つい低感度かと!
       が、聞こえると言うことに関しては、ちゃんと聞こえます(IC-7300と、聞き比べて確認)
       SSGで計測してますので、感度に問題がないことは分かった上でアンテナをつないだの
       にも関わらず、あまりの静かさについIC-7300と聞き比べをしないと不安・・・ということ
       になってしまいました(Sメータの振れは無視、耳で内容が聞き取れるかどうかの比較)
       日頃のIC-7300とは、全く雰囲気が異なります
       IC-756PROV以上に、ゆったりとした気分で受信することができます(当たり前だと
       思っていた、IC-7300のざわつきが、今度は耳障りになります)
   
やはり少し気になって・・・ここまでJRC製品を手にする機会がなかったことが全てです
同じJST-135Dを入手して、基板を差し替えて動作の確認をしてしまいました
結果は、変化無し・・・今の状況で正常であろうという結論です
この安心?のためにだけに、わざわざ1台入手するか・・・全く道楽の世界です

赤白のケーブルは、コネクタピンのリカバリに配線したもの(12Vと9Vのライン)
ソケット交換をしようとも思いましたが、マザーボードを壊しそうで、格好を言わず別配線としました
シールドケースの錆が目に付くように、保管状態は良くないマシンでした
その右のまとまったケーブルは、シリアル/232cコネクタに向かうケーブルです

不動品を2台目として入手しました
保管状態が良くなく、見た目は良くありません
また背面部が結露もしくは濡れたのでしょうか、錆びが気になります
表示あるいは操作については、それなりについてきます
受信ノイズは聞こえるし、VOXは動作し送受信の切り替わりはしますが、送受信動作は全くしません
予想どおり、DDS/LOOP1回りのUN−Lock LED点灯の状態で、RF−フィルターIF 各ユニットは正常と思われるものでした
手持ちのマシンと各ユニットを入れ替えて、動作に大差がないことを確認しました
これで、2台目を入手した目的は達成です

ここで、つい悪い癖が・・・
折角だから直そうと・・・変に悩むだけで終わることを承知で、手を付けることにしました
幸い自作したエクステンションボードもあります
今回は、目一杯悩みました・・・いえ悩まされました!
1.マザーボード上のソケットの足が1本折れていた(これが原因で、ボードに9Vが給電出来ていなかった)
2.DDSユニット、20MHzクリスタル発振段に続くバッファTrが壊れていた(20MHzが出力されていない、2MHzは出ているのに)
3.マザーボードのパターンが錆びて切れていた(2箇所)
以上の発見と対応で、キチンと全体の動作をするようになりました
予想どおり、頭の体操と目の運動がしっかり出来ました!!

余談ながら、今となってはJRCのサービスも受けられませんが、何かあったときは結構大変そうなマシンです(昨今のマシンは、皆同じかも!?)
この2台、発売時期に差があるようです(CPUボードのみバージョンが異なる)
使用フィーリングは、少なくとも受信については全く同じです

最終的な性能比較をしているところ
2017.06追記

本機ですが、アナログ最終版の設計と言っていいと思います
3rd-IFは、98KHz・・・まるでDSP処理の採用を意識してのものか、と思わせるような設計です
この後のモデル、JST-145/245もほぼ同様の設計(クワッド・コンバージョン・・・間に9MHzIFがいます)で、やはりオール・アナログ・・・結局DSPの採用は無いまま、マーケットから撤退と言うことになります(受信機NRD-545が、JRC唯一のDSP搭載機かと思います)
さて、本機のIF残留ノイズは非常に少なく、アンテナをつないでも不思議と外来ノイズの影響を大して受けません(他機種との比較)
非常に聞きやすいと言うか、安心して聞くことが出来る印象です
これが、パイルアップの中でどうかと言うところまでは未体験です!
 2016.12   JA4FUQ

BWCユニットが入手できましたので、試しに組み入れてみることにしました
このユニット(CFL-243W)ですが、ご覧のように、結構な量のパーツ構成で作られています
  
所定の位置に差し込みました
IFユニットのジャンパをカットし、設定を変更します
本機は、SSB標準フィルタのみの搭載ですが、BWCユニットを使って通過帯域を絞ることで、1KHz離調時、21db程度、1.5KHz離調時に、40db程度の減衰効果が確認できました
実際の受信に於いて、PBSとの組み合わせで、確かに混信対策に効果を表します
20A程度の定電圧電源では、本機をフルに動かすには容量不足と言うことで、純正の電源装置 NBD-520Jを入手しました
2018.03

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