NCX-5 US.National



NCX−5(MKU)

当面、机上のお飾り・・・博物館のつもりでしたが、つい手を出してしまいました

シャーシ・レイアウトほか、基本的なところについて




コンパクト(KWM−2に比べ、横幅40mm、奥行き15mm小さい)ではあるのですが、シャーシの上は立て込んでいます
ファイナル部も、少し沈めてあります

Collinsのオール・アルミシャシには、引けをとりますが、錆などは生じていません(USは、湿度が低い!)

オリジナルは、NCX−5ですが、前オーナーの手によって、NCX−5MKU相当にアップグレードされています(送信BMが、7360からダイオード式に/キャリア・サプレッションの向上とあるアップグレードキットが後から組み込まれている)

そして、EXT−VFO内のGTソケットには、器用に25KHZマーカーが組み込まれ(オリジナルは、100KHz)、独自の定電圧電源が組まれていました(フロントパネルのトグルSWは、この電源SW)

受信部については、RF1段、IF2段増幅という構成が一般的であったなか、RF2段、IF3段増幅という構成・・・受信RF増幅段ANT入力側は送信のπマッチを、プレート側は送信ドライバと共通と、RF段の選択度とゲイン不足は否めないところを、2段増幅によりカバーしたと考えられます

先に発売されたNCX−3も同様の方式で、IFは3段増幅になっていましたが、RFは1段・・・14MHzまでの3バンドだったので、これで問題はなかったのでしょう

NCX−5では、ハイバンド対応と言うことで、あるいは、NCX−3で何か学習して、このような構成になったと思われます
発売当時のパンフレットにも、RF2段と言うことを前面に出していたように記憶しています
この後登場のNCX−500では、同様の設計でありながら、RF1、IF2段の構成になっています
VFOメカ  VC可変の一般的なVFOに、メカニカル・カウンターを組み合わせてあります
    
ダイヤル1回転でおおよそ10KHzに減速してあります
このようなメカ的な周波数表示にもかかわらず、一般には必ず付いているであろうと思われるダイヤル補正手段がありません
ということは、それなりの周波数展開に自信があると言うことなのかもしれません
その昔、HROで有名なNational社のことですから!
あのHighQコイルとVCの精度の高さ(シングルスーパーにも関わらず、あの高感度と周波数読み取り精度の高さ)は、今から思っても素晴らしいものがあります
本機のVFOにも、周波数補正用のローターが別に付いた特殊なVCが採用されています
National社のノウハウを垣間見ることが出来ます
せっかくだから、せめて±1KHz程度の誤差に納めたい・・・補正調整に時間を取ってみます
NCX−5のもつ、大きな特徴の一つがダイヤルメカ
アナログVFOにもかかわらず、ディジタル風/カウンタ表示をします
逆へテロの場合、どう表示するんだろうと思ってバンドを切り替えてみたら、なんと表示(ドラム)そのものがバン!と横方向に動いて、必要とする表示が得られるようになっています(何が起きたのか、思わずビックリ!)
先に、内部からドラム構造を見ていれば,気づいたことですが(上写真参照)、外部VFOのバンド切替SWが、カウンタ・ダイヤルの横にある意味も分かりました!

昨今の、なんでもアプリ(ソフト)で対応するものとは違って、とても凝った方法が採用されています
デジタル技術を駆使・・・昨今とは違って、メカ技術と手間を、惜しみなく使ったもの、という印象です
まさに、アナログ技術万歳!です

なかなか古い無線機の魅力から解放されないところであります
VFOメカへのシリコンオイル塗布からスタート、まず気づいたことから手を付けることに・・・・
IF初段の真空管ソケットの接触が悪い・・・・何かで球を押さえてないと(上手にシールドケースを使えば良いかも・・・!?)正常動作しません
調べると、ソケットの中でヒーターピン部分が折れています
ここはソケット交換しかありません
オリジナルは、シールド・ケース付きだったのですが、手元にあったノーマルのタイトソケットに交換しました
すぐ隣が、キャリア発振なので、本当はシールドが欲しいところです
次に、マーカー発振の動作が不安定・・・発振したり止まったりします
後から、前オーナー?が製作追加された、GTソケットに差し込んで使える、25K/100Kのものですが、半田付け不良が数カ所ありました
そして一番気になるのは、AFボリューム・・・よく使うあたりでガリが発生、少々のお掃除では好転しません
ここは交換しかない・・・そうは言っても500K−Aカーブ+10K−Bカーブの2軸2連で、マーカー用のPULL−SW付きのボリュームなど、そこらに出回っているはずはありません
そこで目をつけたのが、TS−520のMICゲイン、パワー調整ボリューム・・・都合の良いことに、RFプロセッサのPULL−SWが付いています
中古品をオークションで入手しました
問題は、ボリュームが10K−Aカーブ(半導体用途では当たり前!)+10K−Bカーブ(こちらはそのままOK)である点、
実際に交換してみたところ、そのままではゲインが大きく低下します
そりゃそうです、500Kの両端に出る電圧で動作させるところに、10KΩという低抵抗を与えればそうなります
そこで、これまた最近入手しづらくなった山水(今は橋本電気)のST−14という入力トランスのお世話になりました(昔の2倍くらいの金額でした)
これでゲイン的には全く問題なく、従来の雰囲気で使用できるようになりました
ここで最後の問題は、ツマミが合わない・・・折角の古いマシンですからオリジナリティは尊重したい、ということで強引にツマミを削りました(穴あけしました)
幸い、RFゲインボリュームツマミは、全てアルミ製、AFゲインボリュームツマミは、中の芯はアルミでしたので、強引にドリルで穴を大きくしました
PAツマミのイモネジがきちんと締まらなくなっていて、使っているうちにツマミが空回りを始める始末、このAFボリュームツマミと同じものだったことを良いことに入れ替えました
AFボリュームを回すのにそんなに力を入れる必要はない・・・です
ツマミ類全般ですが、プラスティック部分に割れが生じてきたものが目に付きます
ここは、簡単に接着剤対応しました
見た目、あるいはちょっと使ってみたところでの気づいた問題は、このように解決しました

さて、その気になって?実際にアンテナをつないでWatchしてみたところ、プロダクト検波へのIF入力が大きいと思われる点、ローカット過ぎであるオーディオ特性などが気になります
まず、IFからプロダクト検波への結合コンデンサに直列にトリマ・コンデンサを入れ、レベルを調整しました
AF段では、カップリング・コンデンサの容量を大きくし、ベッタリ・アースだった初段増幅管のカソードに抵抗を入れ、少しバイアスをかけるようにしました
また、Collinsでも経験することですが、32S/75Sに比べ、KWMの真空管寿命が短いこと、すなわち真空管にかける電圧はなるべく低い方が、真空管の長持ちにつながるという過去の経験を活かそうという気になりました
280V、220Vという2系統で構成されているなか、送受で切り替えている220Vのところを、単独で190Vの安定化した電圧に変更しました
終段6JB6のSGも、220Vから190Vへ変更です
送受信で流れる電流値をなるべく揃えたいと言うことから、ドライバの6GK6のSGもこちらからの供給にしました
終段動作ですが、SG電圧の低下により、バイアスは浅くなり、ドライブに余裕が生まれます
パワーですが、言うほど大きく変化しません
余談ながら、この電圧を150Vにすると、明らかに受信感度が低下します
190Vの安定化は、古い時代の10Wクラス・ツェナーダイオード(120V+75V)のお世話になりました
負荷が変わることで、元々の220Vラインの電圧も上昇しますので、直列抵抗を変更しました(750Ω → 2KΩ)

ここまでの手を加えたところでの変化/結果について
受信の音色は落ち着きました
7MHz帯で、うるさ方のQSOを落ち着いた音で聞けるようになりました(もちろん、最近のマシンで言う良い音とは違うでしょう!)
59++でも、RFゲインボリュームに手を伸ばさなくて問題ありません
Sメータの振れは、+20db位まで偶然?にもIC−756PROVとほぼ同じです(7〜21MHz帯で確認)
高2中3という構成で、AGCの効きが良いということがあるかも、です
聞こえるノイズの質には好き嫌いがあるかもしれませんが、個人的には真空管受信機のおとなしい音色が好きです
半導体受信機から聞こえるノイズは、刺々しく聞こえて感に障ります
一般オーディオ装置と似た感覚です
送信に関しては、まずツートン波形が安定しました(バンドによる状況の変化がなくなった)
これは、現状で言えることで、活きの良い真空管が入ればどうなるか?などの評価とは異なります
パワーが多少下がることより、電波の安定、真空管寿命の延命に価値を、です
真空管全体の寿命については、短時間では何とも言えませんが、気は心・・・です
真空管(MT管)を触っても、触れるくらいの熱さに落ち着いています(何という原始的なチェックかしら!)
この手を入れたことで、送信への切り替え時に一瞬ハウリング?音がするようになってしまいました
AFボリュームを絞れば、単にポコンです
う〜ん、何が原因か、今のところ???です
実用に向けて
第一弾は、VFOダイヤルの読み取り誤差/リニアリティについて
まず、入手時点では±10KHz程度の誤差がありました
これでは、そのまま実用にはなりませんし、National社に失礼?です
まず、500KHzの展開から調整をスタート
前オーナーがメインVCでリニアリティ調整をなさっていたようで、ローター側の形状をノーマルに戻してやっと、この展開がOKになりました
リニアリティの調整は、補助で回っているVCで行うようになっています
ざっとした作業でバンド内表示誤差±数KHz程度と言ったところです、なかなか手強い!
本当に久しぶり・・・FL/FR−DX400以来かな、VFOのリニアリティ調整は・・・
時間が取れるとき、±1KHz以内を目標に、もう少し追い込んでいきましょう
実用に向けて、第二弾
やはり最後に行き着くのは、VFOの安定度
現状で1時間くらい通電しておくと、それなりに安定にはなりますが、長時間QSOに耐えるところまでには至りません
ここは、ATLASでも世話になった、X−Lock手法を取り入れようと準備をしています
ここが落ち着けば、十分実用に耐える無線機になることでしょう
2014.02   JA4FUQ

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