National/Matsusita RJX−810D
現在のPanasonicも、あるときアマチュア無線機器を販売していました
松下電器産業ラジオ事業部、と記載があります
ここでご紹介するのは、1982年に発売されたHFトランシーバです
1.8〜29.7MHz WARCバンドを含むオールバンド SSB/CW 100W機 いわゆる普及機です
他社では、ゼネカバ受信に対応したトランシーバーも発売されている中、本機はあくまでアマチュアバンド専用です
なんとなく、TRIO/KENWOOD顔です
私も、手にしたのは初めてです

幅322  高さ132 奥行き316(放熱フィンを含めると402) 単位mm
メータ部赤の色落ち(日焼け)が、時の経過を感じます
同時期に、ICOMからは、IC-720A YAESUからは、FT-ONE JRCからは、JST-100が登場

松下電器産業ラジオ事業部としては、本機の発売からさかのぼること7年前、1975年にRJX-1011というフロント・パネルもデカければ価格も高い(確か¥430,000-)、そして珍しい?数字4桁の型式という高級トランシーバーを出していました
RJX−1011
ファイナルは、自社のS2002 (お馴染みの、S2001ではない)X 2本という、ハイブリッド構成でした
USでは、hy-gain(アンテナ・メーカー)ブランドで売られていました
この独特のデザインは、同時期に発売された、RJX−661という50MHz帯 オール・モード・トランシバーにも採用されています

本機は、オール・ソリッド・ステートで、AC電源も内蔵・・・スイッチング・タイプのものを内蔵し、重量は9.5Kgという小型軽量のものです
N社では、この後、オールバンドの無線機を出すことなく、このマーケットから撤退となりました
RJX−751 7/21/50MHz 3バンド SSB/CWトランシーバ(1983年発売)が、最後の無線機となりました


特別に目に付く機能とか性能は見あたりません、この時期ごく一般的なHFトランシーバー/普及機かと思います

DBMを多用し、AGCはオーディオ検出型で、RF段についてはATT方式を併用、ダイナミックレンジの向上を目指してあります
PLLデジタル・シンセサイザを採用した、IF9MHzのシングル・コンバージョン方式です
2VFO(たすき掛けOK)を装備
マイクコンプレッサを内蔵・・・スピーチプロセッサではありません
600Ωから50KΩのマイクロホンに対応と、ここは融通が利きます
PLL同様に、この頃の流行りであったIFシフト・・・この社では、IFチューンと表現・・・も搭載
面白いところで
  オートワッチシステム 
      メモリ設定した2つの周波数間を1KHzステップでオートスキャン
      信号を見つけると、勝手に3KHz戻って、100Hz単位でスロースキャンに
CPUバックアップの内蔵電池は、ありません
AC電源プラグを抜くと初期値に戻ってしまいます
AC電源内蔵で、ACプラグを常に商用電源に差し込んでおくことで、バックアップできていると言うつもりかも

リアパネルは、極めてシンプル
ACC端子 電源ヒューズ アンテナ接続コネクタ、外部スピーカー接続端子 電源接続コネクタ(AC/DC兼用) アース端子
以上です

ボトム・カバーを外して撮したものです
普通のベークライト基板の採用
でも、保存状態は良いようで、基板の劣化は目に付きません
写真では、1枚の基板に見えますが、基板は2枚構成です(RF&BPF部と、IF&ジェネレータ部)
メイン・ダイヤル
ロータリー・エンコーダー方式なのですが、タッチはまるでバーニア・ダイヤルを回すかのようです
元々がこうなのかどうか知らないのですが、きっと意識してこうしてあるのだろうと思います
ボトム・カバーに内蔵スピーカーが取り付いています
内蔵スピーカーにしては大型のしっかりしたスピーカーですが、サランネット(スピーカーの前に貼る布)は付いていません
外から、スピーカー・コーン丸見えです

トップ・カバーを外した状態で撮したもの
アンテナコネクタ右が、RFフィルタ群
バンド切替SWで選択されます
今回のマシンでは、21MHz帯部分に、なにかロスする原因がありそうですが、無視しました(点検せず!)
ベーク基板部は、VCXO&CARブロック
シールド・ケースの中身が、問題が色々あったPLLブロックです(上下に2枚の基板で構成されています)

こんなところに会社ロゴを入れるのは、さすが宣伝の松下電器産業・・・でしょうか!?
USでは、使用できなかった「National」です
フロントにキージャックが配置されているのは、良いことかも
ダイヤル・ステップは、1KHz、100Hz、25Hzの三択です

機会があれば、National(松下電器産業)のHF機を見てみたい、と言う思いがありました
時々送受信できない
こういう曰くのあったものを入手しました
なるほど、電源を入れると、バンドによって受信できたり出来なかったり、放置しておくとガサゴソ音がして受信していたものが受信できなくなったり、また突然受信したり・・・ガサゴソがとても気になります

メカ的なトラブル・・・接触不良が想像されます
まずは基板取り付けビスの増し締め・・・予想どおりPLL関係基板2枚については、8本全て3/4回転くらい回りました
絶縁ワッシャの入ったところや、シールドケースもわざと半田付けしないところがあったりと、作者の苦心が見えます
そして次は、バンドスイッチの接点クリーニング
ここまでの処置で、一見正常に動作をするようになりました

時々、ビートが極端に濁る
言葉で表現しづらいのですが、いわゆる低い周波数でFM変調されたというか、濁ったというか・・・
とても受信に耐えません(酷い音に復調されます)
ケースほか、フレームをトントン叩くと、異常に反応します
アース不良/増し締め不足の問題ではありません

この写真は、コンデンサ交換前、元の状態
とんでもないところに原因がありました
左写真は、怪しいと思って取り出したPLL基板/下側を撮したものです
この基板内にある5Vの三端子レギュレータの出力側パスコン・・・・6.3V100μFの電解コンデンサ
よく見ると、周囲の基板が何となく黒ずんでいます
電解液が漏れたのかも知れません
取り外してCメータで見ると、容量がふらふら変化します
直流抵抗で見ると、リークがありそうです
新品に交換することで、時々起きる極端にビートが濁る症状はなくなりました

どこがどうしてこうなった・・・ここは、結果オーライで!?

全体の調整をして、最後にスペック・チェックです
  送信   1.8〜24.5MHz帯   21MHz帯を除き 100W以上
        28MHz帯   50W以上
        21MHz帯のみ80W程度です
        想像ですが、前のオーナーが21MHz帯を多用されたのか、RFフィルタ部に劣化が
        生じていると思われます(アンテナ負荷に、何か無理があったのかな)
        私的には問題にならない範囲なので、無視します

  受信   スペックどおり、全バンドにおいて0.25μV入力で S/N10db以上が得られました
        7MHz帯においては、0.16μV   28MHz帯で、ちょうど 0.25μV 
        実際の受信においては、ごく一般的なフィーリングです
   
本機ですが、PLL出始めの言わばメーカーとして挑戦的な製品であることは否めません(ここで、無線機作りの技術が途切れたことは、残念に思います)
全体をひとつのループで行うまでにも至っていません(各バンド毎に、水晶発振子の周波数調整が必要だし、安定度もバラバラ)
また、キャリア(Lo)のピュリティが気になります
28MHz帯になると、SSGの信号を受信するだけでも気になります
DDSの登場まで、仕方のないことなのかも知れません
最近のマシン、特に高級機のこの手の性能はとてつもなく良くなっています
それが近接信号に対する強さの元にもなっています
 2016.12   JA4FUQ

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