ICOM IC-700T
アイコムが、初めてHFの商品として発売した、ある意味貴重な送信機です
ペアとなる受信機は、IC-700Rです
アマチュア無線業界には、VHFトランシーバーから参入したアイコム(当時は、井上電機製作所)が、最初に手がけたHF機です
1967年の発売 ここにあるものはシリアル・ラベルの記載から70年製のようです
本機も、相方の受信機IC-700R同様に、ソリッド・ステート化を同業他社よりひとつ先行した、当時としては先進的なデザインです
歴史的な詳細は、相方の受信機 IC-700R のページに記します

本機は、当時最新の送信管として多用されていた松下製 S2001 2本を軽く使った50W出力設計、このファイナルと、ドライバ/ミキサに12BY7A 2本を使用し、あとは全て半導体というデザインです
電源については外付けで、AC100V用とDC12V用の2種類の用意がありました
電源コネクタにUS/GTコネクタが多用されているのには時代を感じます

手にしたこのものですが、驚きを禁じ得ないほど程度が良い・・・見た目も電気的な動作もです
とても50年近い選手には見えません、きっとほとんど使われていません
AC電源(IC-700PS)については、さすがに電解コンデンサの劣化が見られましたが、付属していた700PS、700Rとの接続ケーブル、ハンドマイクなどの一式も、たいした汚れもなく付属していました
こちらについては、気になったところをちょっと手を加えただけでのご紹介です



幅255 高さ160 奥行き235  単位はmm 約5.3Kg(電源別)
このシリーズに付けられた当時のロゴです
化粧箱には、株式会社井上電機製作所と緑色で印刷してあります

アイコムの特徴というか、オール・ソリッド・ステートVHFトランシーバでこの業界に参入してきたアイコムらしく?積極的に半導体化を進めてあります
本機ですが、非常にシンプルにデザインされています(受信機同様、シングル・コンバージョン方式で、VFOは受信機から)
いわゆるSSB入門機という位置付けだったのでしょう
でも、572Bパラの500Wリニアアンプ IC-2K の用意もあったので、必ずしもそうではないかも!?
機会があれば、このあたりのことを当時の設計者にお尋ねしたいところです

まずはフロント/お顔から

コンパクトかつシンプルです(電源外付け)
3.5MHz帯から29MHz帯まで、HF5バンドをカバー
VFOは、相方の受信機IC-700Rに依存します
デザインは、もちろん相方とマッチ!です

モードは、SSB、CW
逆サイド・バンドは、受信機同様対応できません
SSB時にも、キャリア注入が出来るようになっていますのでA3Hにも対応OKと言うことになります

こちらは、リアから
メーター照明ランプは、白熱球からLEDランプに交換しています
12V定電圧化のためにも、消費電力は極力減らすことを考えます
懐かしさで言えば、黄色っぽい電球色が良いのかも知れませんが・・・

ファイナル管は、ご覧のように横置きです

・電源接続はUSプラグ
・リモートケーブルは、MT7Pソケット
・アンテナあるいは受信機接続はM型
・VFO接続は、RCA
・CWキーは、イヤホンジャック
・アース端子は陸式ターミナル
何となく時代を想像させるパーツが使ってあります

特徴的なのはレイアウト

ご覧のように、3/4は真空管スペースです
MT管2本は、12BY7A ミキサとドライブです

ファイナル管 S2001 は横置き
自然対流で冷却ということでは当を得ていると思います
入力側はオープン、出力側がシールドケースの中という構造です(ファイナル部のシールドケースは取り外して写しています))
各同調VCのシャフトは、ベークライト棒が使用してあります
リレーが2つ見えていますが、いずれも大型! VOX動作には不向きですが、丈夫ではありそうです

こちらがボトムを撮したもの

真空管スペースの大きさが見て取れます
メカフィル風に見えているのが、9MHZクリスタルフィルタです

長細い基板は、
    AF−平衡変調−フィルタ−IFアンプ
           |
        キャリア発振
ここまでを乗せた、いわゆるジェネレータ部です

開いている(裏返しに写っている)のはVOX基板です
こうすることで、通電したまま動作のチェックが可能ですね

VOX基板には、9Vの定電圧回路も乗っています
今回、基幹の12Vも定電圧化しましたので、ここは二重に安定化ということになります

AC電源 IC-700PS です
スピーカーが内蔵されています
中身の様子は、下段でご紹介

フロントパネルにある電源SWは、本体のSWに関係無く活きています(なかなか面白い!SWは並列接続です)
PS本体フロントパネルと700Tフロントパネルのスイッチが並列接続になります(どちらからでもON可能)

内蔵スピーカーですが、意外と高音圧です
Trアンプで出力が大きくない点を考慮したものかと想像されます
そのAFアンプ共々、中音域が強調された堅い音がします!
IC-700PS のリアです
電源接続は、8P USソケットが使用されています

IC-700R用にでしょう、ACアウトレットがひとつ用意されています
あとは、スピーカー接続用の端子です

DC電源 IC-700DCPS
当時、こんな用意があったのです
リアル・タイムで発売を知っている世代なのですが、このものの存在は全く知りませんでした

ケーブルは、出力側 IC-700Tに接続するためのものです

DC12V移動運用OKです
さすがに車載運用はないでしょう・・・USならあり得そうですが!?
ケースを開けるとこのようになっています
両サイドパネルを外した中に、入出力のケーブルを接続する端子が用意されています
パワートランジスタ・・・今となっては懐かしいPNPタイプ、2SBタイプの採用です

こちらが、電源出力側です
こちらがDC12V入力側です

このDC電源 多分全く未使用と思われます
ケーブルの端子に、締め付けた後が残っていません

シリアル・ラベルには、68年12月とスタンプが押してあります

興味深い点、時代を感じる点
1.ファイナル管の設置構造
  一般的なのは、ファイナルシールド部に縦に置かれる・・・ですが、このものは横置きです
  ドライバ段からの接続は、露出 出力側がシールドされた状態の構造です
2.AMモード
  特に用意されていないようですが、この時代のことですからA3Hは必須だったのでしょう
  SSBモードで、ちゃんと対応できるようになっています
3.CWモード
  9000.0KHzのキャリア発振(フィルタ中央の周波数)を持たせてあります
  そしてバイアス・キーイングです、このあたりはキチンとです
  でもサイド・トーンの内蔵はありません! 従いましてセミ・ブレーク・インも出来ません
  SSB中心の設計・・・だったのでしょう、きっと
4.12BY7Aによるハイレベル・ミキサ
  受信機からは、数Vと言う高いレベルのVFO信号を受けています
  x−Lockの接続で、多少はレベルが下がっていると想像されますが、気にはなりません
5.ドライバ段 12BY7Aにも中和が取ってあります
6.ALC
  CW時には無効になっていますが、増幅型が採用されています
  3極管を使った、ハリクラフターズ・スタンダードALC同等のTr版です
7.50W出力
  S2001を2本パラレルで、B電圧600V 0.2A程度のプレート電流で使用
  実際には60〜70W程度の出力が得られますが、軽く使っている点は評価できそうです
  横置きというレイアウトを採用することで、自然空冷で耐える範囲かと・・・ケースは、背面を含め、
  ぐるりパンチングメタル多用です
8.シンプル
  ファイナル管のバイアス調整VR、あるいはRFメーターのスケール調整VRなどありません
  それでもファイナル無信号時IPは、約50mAとちゃんと設定できています
  マイク・ゲインは、もう少し余裕があると嬉しいというレベルです(Tr2段増幅)
  VOXは大きな音のリレーが動くため、実用度は低いでしょう
  ファイナル・プレート同調に、減速機構は付いていないため、ちょっとクリティカルです
  RF対策の基本に忠実/同調VCのシャフト延長は、全てベークライト棒が採用してあります
  残念ながら、バンドSWのシャフトは金属でした

以下、今回取り組んだ改造・・・電源だけです!が、簡単にご紹介します
高圧平滑用電解コンデンサ
大きな灰色のものがオリジナル
ご覧のように、液漏れ?を起こしてます
容量を測ってみると問題無さそうなのですが、ここは安全を見て交換することにしました
オリジナルは、350WV 100μF
一番小さく見えるのが、450WV 100μF
あまりに小さく、取付家具に合わないので、真ん中に見える450WV 180μF を採用しました(沢山持っていたこともあってのことです)
3個使用しました(高圧600Vと中圧300Vのライン)
それにしても、昨今ずいぶんと小型化しています

IC-700PS 最終の形です(上から見たものです)
黒く見える電解コンデンサ3個が、今回交換したものです
右下、電源出力8P/USソケットのところに、12V低損失3端子レギュレータICを取り付けています
オリジナルのままだと、無負荷で15V程度出ています
メーター照明ランプをLED化することで、消費電流も大きく低下するので、ここはやはり定電圧化でしょう


キャリア・バランスが、大きく崩れていたくらいで、これといった不具合はありません
3.5〜28Mhz帯全てに於いて CWで、60〜70Wの出力が得られます(600V 0.2A 前後です)
プレート同調にちょっと気を遣う(減速機能が無いのに重たい!)位で、特に不具合は感じられません
もう少しマイク・ゲインがあったらいいなとは思います
RFメーターが20%程度しか振れないので、60%位振れるようメーター直列抵抗を調整しました(可変VRは、ありません)
いきなりON−AIRは恐ろしい?ので、いつものローカル局が出ていらしたら、お相手願おうと思っています
今度は何?って、聞かれます、きっと!
 2017.05   JA4FUQ

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