全国算数・数学教育研究(埼玉)大会
幼稚園・小学校部会 第10分科会(学習指導法)提案資料
2001/8/7
巨大プロジェクト夢の大橋のすばらしさに迫る算数的活動の工夫
─4年垂直・平行の学習を通して─
日生町立日生西小学校 山下 修司
矢掛町立美川小学校 谷本 知之
1.はじめに
科学技術に支えられて日本の産業はめざましく発展してきた。しかし,一方では子どもたちの理数離れが進んできている。
そこで,本研究では,現在の科学技術と算数教育の接点における授業のあり方を考えてみた。
それは,科学技術の秘密を探る活動の中で算数のよさにふれ算数を生かした人々の知恵のすばらしさに気づく授業であり,このような授業をすることで算数への関心が高められ,理数離れがくい止められるのではないかと考えた。
 
2.実践の内容
(1)算数的活動の工夫について
次の3点によって活動を工夫する。
 
@現代人の知恵の結晶である建造物;瀬戸大橋を教材としてとりあげる。
 
瀬戸内海に橋をかけ,本州と四国を自由に行き来することは瀬戸内地方に住む人々の長年の夢だった。そして,かつては本当に夢でしかあり得ないことだった。しかし,科学技術の発展は,海をまたぐ巨大な橋を建設することを可能にした。本州と四国を結ぶルートは地形や潮の流れ,工事にかかる費用などから検討され,「神戸・鳴門ルート」「児島・坂出ルート」「尾道・今治ルート」の3つが選ばれた。そして昭和63年4月10日に最初に開通したのが,我が岡山県の児島と香川県の坂出を結ぶ瀬戸大橋だった。本州と四国を結ぶ橋の中で唯一鉄道と道路が2階建てになったこの橋は,当時の科学技術の粋を集めて建造されており,その大きさと美しさは見る者の心を奪う。
この瀬戸大橋を教材としてとりあげることで,用いられた技術や知恵のすばらしさに気づき感動を味わう授業の展開が可能になり,学ぶ意欲や能力が育てられるのではないかと考えた。
 
A子どもが設計者,技術者となったつもりで橋の秘密を探る算数的活動をする。活動の中で,頑丈な橋作りを可能にするため,垂直・平行が用いられていることを知る。
 
主体的に学ぶ態度を育成するには,子どもたち自身が学習のめあてをもち,意欲的に学習をしていく中で問題を解決し,様々な能力を身につけながら数理的な面から感動を味わうことが大切である。そしてこれらを繰り返し体験することで,意欲が高まり能力が身につき,子どもたちは主体的な学習者へと変容していくと考える。このことを具現化するために本単元では,学習のめあてを「瀬戸大橋がじょうぶなわけや仕組みのひみつを探って体育館いっぱいの大きな瀬戸大橋の絵をかこう。」と決め,そのめあてを実現するために子どもたち自身が設計者,技術者となって橋の秘密を探るという単元構成にした。子どもたち自身が橋の秘密を探る学習をすすめていく中で,垂直・平行の関係に気づき,橋を再現していく学習を展開していく中で,作図の仕方を見つけ,まとめていくことができると考える。
 
B子どもが体育館いっぱいに巨大な瀬戸大橋の図をかく算数的活動をする。
 
この活動を通して,学んだ知識を実際に使うことを体験し,その難しさや工夫を実感することで,算数のすばらしさや人々の知恵のすばらしさに気づくことができるようにする。
 
(2)学習計画(算数9時間,課外2時間)
課外(2時間)
ビデオを視聴し,瀬戸大橋の雄大さや作業の苦労について知り,瀬戸大橋にかけた人々の願いや思いに気づく。
第1時
学習のめあてを決める。
第2時
瀬戸大橋が倒れない丈夫なわけを考え,垂直の関係を知る。
第3時
瀬戸大橋の仕組みを調べ,平行の関係を知る。
第4時,第5時
垂直・平行を使って,瀬戸大橋の図をかく。
第6時,第7時,第8時
体育館いっぱいに瀬戸大橋の図をかく。
第9時
学習のまとめをする。
 
(3)授業実践
単元の目標
○垂直・平行の関係にある直線を進んで見いだしたり,調べたりする。
(関心・意欲・態度)
○複数の直線の関係を長さや向きにとらわれず,垂直・平行の観点でとらえることができる。 (数学的な考え方)
○垂直・平行の関係にある直線をかくことができる。 (表現・処理)
○垂直・平行の意味や特徴,性質を理解することができる。 (知識・理解)
 
課外活動
目標 ビデオを視聴し,瀬戸大橋の雄大さや作業の苦労について知り,瀬戸大橋にかけた人々の願いや思いに気づく。
学習活動 NHKのテレビ番組;プロジェクトX「男たちの不屈のドラマ 瀬戸大橋 〜世紀の難工事に挑む〜」 これは,杉田秀夫という一人の天才技術者を中心とする技術者達が瀬戸内海の厳しい自然環境,相次ぐ実験失敗,石油ショックによる着工凍結,そして家族の不幸といった数々の困難を乗り越え,巨大橋の架設という大事業を成し遂げていく有様を描いたドキュメンタリーである。これを視聴したことにより,改めて橋の雄大さを知り,橋にかける郷土の人々の願い,巨大な橋づくりの困難さ,橋づくりにかけた人々の願いや思いに目を向けた。
 
児童の感想から
・ケーソンが1pでも傾いてずれたら瀬戸大橋を作ることができないことが分かった。
・瀬戸大橋を作るには,のべ5000人で12年もかかるなんてすごいけれど,とても難しいと思った。そんなに苦労してできた橋だとは知らなかった。
・紫雲丸の事故で子どもが100人以上も死んだのが悲しかった。もし瀬戸大橋ができていたら,こんなことになっていなかっただろう。
・工事に失敗してもあきらめずに最後までやり続けた男達は,本当にすごいと感じた。
・社会で勉強したときには,ケーソンがとっても大切だとは知らなかった。たった1pずれただけでも瀬戸大橋が出来ないなんて。50pもずれてしまったケーソンをたい積層の泥をバキュームで吸い上げて何日もかけて直していたのがすごいと思った。(これまでの)勉強では分からなかったことがいろいろと分かった。
 
1次第1
目標 実物を見たことを思い出したり,写真を見たりして,気づくことを出し合い,学習のめあてを作る。
学習活動 これまでの社会科学習,社会見学の経験,写真から気づくことなどをもとに,瀬戸大橋の印象について,話し合った。
児童から出た意見は,「でっかい橋。」「乗りかえなくていいから便利。」「長い橋。」「紫雲丸の事故がきっかけで作られた。」「たくさんの車や電車が通る。」等・・・。
「作るのが大変。」という意見が出たので,どういうところが大変なのか,さらに詳しく尋ねてみると「1pずれてもだめ。」「ダイナマイトの使い方に気をつけないと魚が死んでしまう。」「2万トンもあるケーソンを動かさなくてはいけない。」「潮の流れが速いところで作業しなければいけない。」等と,瀬戸大橋の丈夫さや仕組みの秘密について,さらに関心がでてきた。それを確かめるためにはどうすればよいか尋ねると,模型を作るとか絵をかくとかの意見が出てきた。取り組みやすい活動として絵をかくことを選んだ。
このようなことから単元のめあてを,「瀬戸大橋がじょうぶなわけや仕組みのひみつを探って体育館いっぱいの大きな瀬戸大橋の絵をかこう。」と決めた。
 
1次第2
目標 瀬戸大橋の倒れない丈夫なわけを考え,垂直の関係を知る。
学習活動 前時に設定した単元のめあてを受け,本時は「瀬戸大橋のじょうぶなひみつを探ろう」というめあてを設定した。
 
T 瀬戸大橋のどういうところから丈夫だなと感じる?
C (柱が)太い。
C 重そうだから。
C 電車が通るから。
C すごく長い橋だから。
C 車が通るから。
T なるほど,それじゃあどうして瀬戸大橋はそんなに丈夫なんだろう?
C 吊り橋だから。
C ケーブルが太くて,何本も束ねているから。
C コンクリートの固まりでアンカレジやケーソンが出来ているから。
C 鉄をいっぱい使っているから。
C ゆがんではいけない。
 
これまでの学習の成果か,子どもたちは次々に自分の意見を発表していく。ある程度出揃ったところで,これまで社会科の学習で使用していた資料を配付し,それを用いて次のことを改めて確認をした。「吊り橋が大きな橋作りに適した構造であること。」「瀬戸大橋に使われているケーブルはそれ1本で車約3台をぶら下げることができる強度を持っていること,瀬戸大橋ではそのケーブルを何本も束ねて使用しており,それを全てつなぐと地球を3周する長さになること。」「瀬戸大橋に使われているコンクリートの総量は280万立方メートルであること。」「鉄を69万トン使用していること。」等すでに社会科で学習済みの内容だったが,最後に1つ,ゆがんではいけないという意見だけが,取り残されてしまった。
 
T ゆがんではいけないっていうのはどういうことかな。
C だってゆがんでたら倒れる。
C まっすぐ立ってないとな。
C あと,橋もまっすぐじゃないと渡れない。
C 道路と鉄道もまっすぐじゃないとぶつかっちゃう。
T なるほど,まっすぐ立ってないと,倒れやすいって訳なんだ。それじゃあ,瀬戸大橋はどこに対してまっすぐ立ってるのかな?
C 地面。
T 瀬戸大橋は海の上に立ってるから,地面は見えないね。
C だったら海でいいんじゃないん? 海もまっすぐでしょ?
T なるほど,それじゃあ,海に対して瀬戸大橋がまっすぐに立っているか,調べてみるかな。ところでまっすぐかどうかはどうやって調べたらいいと思う。
C 見りゃわかる。
T それじゃあ,いい加減でしょう? もっときちんと調べる方法はないかな?
C 90度になってるか調べればいい。分度器を使って。
 
この意見が出たところで瀬戸大橋の写真を配布して海面に対して瀬戸大橋の主塔が90度に立っているかを調べた。そして90度であることを確認した後,以下のような垂直の定義を示した。
 
2本の直線が交わってできる角が90度の場合,2本の直線は垂直に交わる。」
 
右手と左手を直線に見立てて90度で交わることを垂直というんだよと説明していると「(ウルトラマンの)スペシウム光線は垂直なんだ。」との声。
そこでみんなでスペシウム光線のポーズを取り,本時の学習を終了した。
 
1次第3
目標 瀬戸大橋の仕組みについて調べ,平行の関係を知る。
学習活動 前時でゆがんではいけないということを子どもたちと考えた際に,道路と鉄道がまっすぐでないとぶつかってしまうという意見が出ていたが,未解決だった。そこで,「どうして,瀬戸大橋の道路と鉄道はぶつからないのだろう。」と問いかけた。
すると,「どこまで行ってもぶつからないようにしてあるから。」という意見はすぐに出たが,それを確かめる手だては出なかった。
「何本ものハンガーロープで吊しているからまっすぐなんだ。」という意見をきっかけにハンガーロープに注目した子どもたちの何人かが,「ハンガーロープは橋と垂直だ。」と言い始めた。
そこで,本当にハンガーロープが橋げたと垂直に交わっているかを確かめることに・・・。全員で瀬戸大橋の写真に分度器をあてて確認をした。実際に90度に交わったところに印を付ける作業をした。そうした中,何人かの子どもが,「ハンガーロープは道路のところと垂直だし,鉄道のところとも垂直だ。」ということに気づいたので,みんなで再度確かめた後,以下のように平行の定義について説明をした。
 
「1つの直線に垂直な2本の直線は平行である。」
 
黒板に2本の平行な直線と1本の垂線をかき,平行な2直線の間の距離は常に一定であることも確認し,本時の学習を終了した。
 
1次第4時,第5
目標 垂直と平行の関係を使って,瀬戸大橋の設計図をかくことができる。
学習活動 体育館での瀬戸大橋作りに向けて,子ども達は,垂直な直線や平行な直線のかき方について学習する必要があることに気づいたので,以下のように働きかけた。
まずは,ノートにフリーハンドで垂直・平行な直線の完成図をかき,どんな形ができるのかを視覚的に確かめた上で,三角定規をどう活用したらよいかを考えた。なかなか意見が出なかったので,これまでに学習した「垂直の定義」「平行の定義」を改めてたずね,思い出せるようにした。
最初に垂直に取り組んだ。三角定規の直角の部分を活用することは,すぐに気づいたが,1つの三角定規をもとの直線にあてて,それ1本だけで,垂直な直線を完成させてしまっていたため,ずれを防ぐために,もう1本の定規を活用することを指導した。
次に平行に取り組んだ。ここでは,何人かの児童が,一旦垂直な直線をかいてから,その直線に対してさらに垂直な直線をかいて平行をつくっていたのを全員に示し,もとになる直線に対して直角においた三角定規を固定して,もとになる直線をもう一つの三角定規によって平行移動すれば,余分に直線をひくことなく平行線がかけることを学んだ。
続いて,今度は,瀬戸大橋の形をかいてみた。ここではプリントに主塔の土台部分と頂上部分,橋げたの両端,海面と海底,ケーブルを支えるアンカレジをかき込んだものを使用し,純粋に垂直と平行の直線をかき込む作業に集中できるように配慮した。
定規を使ってまっすぐな直線をかくのが苦手な子どもが多く,垂直・平行をかく際にも三角定規を1本しか使わない子どもも多くいた。そこで,ずれを防ぐことの大切さをしっかりと確認し,正確な作図を心がけるよう働きかけた。
今回の作図をさらに巨大化したものを次回は体育館で作成することを確認し,本時は終了した。
 
1次第6時,第7時,第8
目標 今までに学習した垂直・平行の知識を生かして,体育館いっぱいに瀬戸大橋の絵をかくことができる。
学習活動 いよいよ最終目的,
「今までの学習を生かして,体育館に瀬戸大橋をかけよう。」
子どもたちの目の前には,体育館の端から端までのびた約20mの白い紙。再現するのは,一番岡山県寄りに架かる下津井瀬戸大橋。実物の約72分の1サイズで再現する。全くの白紙では,作業に困難が予想されるため,あらかじめ,主塔の間隔,左右の主塔からのびるケーブルの交わる中心点,といったポイントとなる場所には印を入れておいた。
最初は,主塔を立てる。紙の下端を海面に見立て,垂直に主塔を立てていく。この主塔を基準にして橋げた部分をかいていくため,ここがゆがむと全体がゆがんでしまう。1m94pの主塔を三角定規を用いながら,慎重にかいていった。
主塔が無事かき上がった段階で子どもたちは数人のグループごとに分かれ橋げたをかいていった。
 
C よしかけたぞ。
C あれ,こっちの線とずれてる。
C やり直しじゃ。
 
橋げたは主塔と垂直で海面(紙の下端)から43pのところに海面と平行な直線としてかく。とはいえ当初,作業は困難を極めた。垂直や平行のかき方を知ってはいても,三角定規を1つしか使わずにかこうする子がいる。1人で全ての作業をしようとして,大きく重い三角定規のせいもあって,つい定規がずれてしまい,正しい直線がひけない子もいる。43pという幅があるため,三角定規を一度ずらしただけでは届かず,途方に暮れている子もいる。
そうこうしているうちに,グループ内で一人は海面に合わせた定規をしっかり押さえる役,一人は定規を平行移動する役,一人は移動後に直線をかく役といった具合にきちんと役割分担をするようになった。
三角定規1つだけでかこうとする子は時間がたつにつれ,いなくなった。そのやり方ではどうしてもうまくかけず,必ず三角定規を2つ使ってかくようになった。
43pという幅についてもいったん中間に平行な直線を仮にかいておき,そこからさらに正しい場所に橋げたをかく子,平行移動の支えに三角定規よりも長い直定規を活用して一度に平行移動をすます子など,工夫して作業している子が次々に出てきた。
次の作業では,主塔から両側にケーブルをかき,そこからハンガーロープを海面に対して垂直にかいた。主塔と主塔の間に18p間隔で海面と垂直なハンガーロープをかいていくのだが,橋げたをかく作業で慣れたのか,てきぱきと作業は進んでいった。
鉛筆のままだと遠くから見えないので,墨汁で墨入れをする作業を同時進行でおこなった。
ついに完成。体育館を横切る巨大な瀬戸大橋ができあがった。
 
C やった。できたぞ。
C すっげー。でけーなー。
C むちゃくちゃ時間かかったなー。
 
活動を振り返り,その大きさに感動した。そして全員で記念写真を撮った。
子どもの中には全員で苦労してつくったこの巨大な瀬戸大橋が実際には約72分の1だったことを思い出し,改めて橋造りの難しさを実感する子や,本物はこの72倍の大きさがあると知って改めて橋の大きさに驚く子もいた。
かくして3時間ほとんど休憩なしで作業した結果,無事瀬戸大橋が日生西小学校の体育館に出現した。
 
1次第9
目標 単元を振り返り,学習のまとめをすることができる。
学習活動 単元の学習を振り返り,印象に残ったことを話し合った。
やはり体育館での瀬戸大橋づくりの印象が強く,作図する際の苦労などが多く発表された。中には,自分たちの苦労から現実に瀬戸大橋を作り上げた人々の苦労に目を向ける児童もいた。
そこで,改めて,「自分たちなりの瀬戸大橋を作り上げたあと,もう一度本物の瀬戸大橋作りを見直してみよう。」と投げかけ,感想文を書いてもらった。
 
児童の感想より
(Aさん)苦労したところは特に,最初にやった橋でした。それは何でか,いつの間にか1oから5oぐらいゆがんでいたからです。瀬戸大橋をかいてみてこんなたった一部分でもずれていたら大変なことがよく分かった。私は最初にしては上出来だと思った。算数で垂直や平行などを習ったおかげでよく分かった。
(Bさん)私は瀬戸大橋の一部をかいて思いました。1pもずらさずに線をひくぞと思ったことやハンガーロープをひくのがずれたらどうしようとか思ったけど,算数で勉強したとおりにやると,きちんとできて,自分なりには,「わあー,すごーい。」と興奮してしまいました。
(Cくん)道路をかく時,すぐずれて困った。僕たちがかいたものの72倍もある瀬戸大橋はなんて大きいんだろう。作った人たちは偉いな。
(Dさん)垂直や平行,いろんなところが1pや5oくらいずれて何度もやり直しをしていた。垂直や平行をかくのが大きいから難しかった。瀬戸大橋はあれよりももっと大きく,大きな瀬戸大橋を架けた人は大変だったろうな。4年生のいい思い出になったみたい・・・。
(Eくん)みんなでがんばれば何でもできる。算数で習ったことを使ってこんなにもすごい模型ができるなんてすごいなと思った。
 
3.おわりに
学習の中に瀬戸大橋という現実の建造物を盛り込むことで,より具体的に児童がイメージを持ちながら,算数のよさにふれ,その苦労や業績のすばらしさに思いをはせることができたように思う。社会科で学習した内容の理解の深化にも役立ったようである。
特に今回,子ども自身が橋の設計者,技術者となって橋の秘密を探る算数的活動を取り入れたことにより,橋の頑丈さを調べる中でごく自然に垂直・平行の利用に気づくことができた。
さらに体育館いっぱいの巨大な瀬戸大橋の図を正確にかく算数的活動をとりいれたことにより,垂直・平行を作図する必要性に気づき,作図の仕方について考えることができた。
そして,学んだ知識を実際に使うことを体験することができた。その中で,細かいずれをきっちりとなおしていかないと出来上がりでは大きなずれとなって現れることや,垂直や平行な直線を作図するときには二つの三角定規を用いてきっちりとずれを防ぐといった精度を維持することの難しさを実感することができた。
このようなことから,巨大な瀬戸大橋づくりを可能にした算数のよさや,瀬戸大橋を作り上げた人々の知恵のすばらしさに気づき,感動することができた。
これら一連の学習を展開する中で子どもたちは,学ぶ意欲を高め,算数への関心を今まで以上に高めたのではないかと思われる。そのことは,子どもに対して行った算数への関心や有用性についての意識調査において右図のような結果が出たことからもうかがえる。
今後も現在の科学技術と算数教育の接点における授業のあり方を模索し続け,算数のよさ,算数を生かした人々の知恵のすばらしさに気づくことのできる授業によって,子どもの算数への関心をより高め,理数離れを防いでいきたいと考えている。
※参考文献
「小学校学習指導要領」文部省 平成10年
「小学校学習指導要領解説算数編」文部省 平成11年
「瀬戸大橋」本州四国連絡橋公団第二管理局 平成11年
「本州四国連絡橋 児島・坂出ルート」[財]海洋架橋調査会 昭和63年


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