STAR SR-40  FANTAVOX HE-50
八重洲無線に合併吸収されたスター(旧富士製作所)の受信機です
多分ですが、1963年の発売かと思われます
DX MATES という勇ましいネーミングですが、内容は5球スーパーです
実際は、整流はダイオードで、4球構成トランスレスの受信機です
BC帯から30MHzまで、4バンドでカバーします
アマチュア無線向けということでは、スプレッドダイヤル、ANLの採用、BFO(後述)機能の搭載です
BCバンド用には、バーアンテナを内蔵、Sメーターも採用されています
発売当時は、完成品とセミ・キットの両方が存在しました
 
発売当初のCQ誌1963年8月号の広告ページ(新製品紹介記事も掲載あり)
この頃は、9R-59、TX-88Aに代表されるTRIO全盛時代です
八重洲無線が、VFOなし(クリスタルorVXO)のFL-10/20を発売したSSB黎明期でもあります

上手にコンパクトにまとめてあります
整然と美しいレイアウトです
VC類は、ブッシングで浮かせて取り付けられています
リアパネル
以下の用意があります
・AC入力
・Sメーターゼロ点調整VR
・アンテナ入力端子

ロッドアンテナのホルダーは付いていますが、入手した時点では、アンテナは付属していませんでした
写真右から
 12BE6 OSC/MIX
 12BA6 IF BFO
 12AV6 検波、AVC、ANL、AF-Pri
 50C5  AF-Main

 トーン切り替えが意外と効果あり
 AF出力は十二分
 
口径10cmのスピーカーが内蔵されています

トランスレスですので、コンパクトに仕上がっています
リアパネルに、BCバンド用のバーアンテナが取り付けられています


3つ見えているコイルは、アンテナ入力コイルです
シャーシ底面

RF可変コンデンサには、タイトトリマが採用されています

左端の群は、OSCコイルです

バンドSWや、AF-VRなどは、パネルに直接ではなく、折り曲げたシャーシに取り付けられています
フロントパネル分解
メーター交換を終えたところです

フロントパネルを取り外した状態です
メーターは壊れていたため取り外しています
ジャンク箱を探して、交換できそうなメーターを探しました
なにせ昨今のご時世で、同等に使えるものが簡単に入手できません
幸いにも、同じ形状の38型のメーターが見つかりました(フロント部の厚さが少し厚いだけで、メーターパネルもそのまま交換できました)
ただ高感度(多分100μA)なためシャント抵抗を別途用意しました

手持ちのメーターを取り付け、フロントパネルを仮取り付けしたところ

メーターは、入れ替えのため取り外しています
カーソルが二つ
黄色が、スプレッドダイヤル
赤が、メインダイヤル
ダイヤル最上段に0−100のスプレッドダイヤル目盛りが用意されています
100にセットするように書かれています
この状態でハムバンドの上限にメインダイヤルを合わせ、低いほうに向かってスプレッドダイヤルで選局する方法です

長方形の白い部分は、照明ランプのカバーというかフィルタに相当する部分です
点照明にならない工夫がされています

暗がりでの照明はこのようになります

作業中に、漏電ブレーカーが落ちました
やるかなと思ってはいましたが案の定・・・
ACラインに関係したオイルコンデンサを2個交換、絶縁不良です
IF周りのバイパスコンデンサに、本来セラミックコンデンサかなと思うところにもオイルコンデンサが使ってありましたので、ここはセラミックコンデンサに交換しました(やはり絶縁不良が見られました)
IF/BFO動作が安定になりました
  
特徴的なのはBFO回路
IFアンプのサプレッサーグリッドを浮かすことで一種の自己発振です
BFO用に発振回路を設けなくて済むという簡易な方策です(5球スーパーの機器構成で、ビートをかけてCWが聞こえる)
同様の使い方としては、Hallicrafters SX-140 でも採用されています(こちらは、RFゲイン調整と合わせて、SSBが復調できるくらい安定な動作)
お話を戻して、本機ではサプレッサグリッドから単線で40cm以上VRまで配線してあったので、ここは細い同軸ケーブルに変更しました
電源の傍を通っていたことにも起因するかもしれませんが、濁ったビート音から改善がありました
それでも本機は残念ながら、とてもとてもSSBが復調できる様子はありません
CWさえも強力な信号には厳しい・・・RFゲイン調整が別途必要な状況です

受信感度などについて
慎重に調整した結果ですが、7.1MHz AM30%変調で、S/N10dbを得るのに6μVの入力と、結構高感度です
またBFOをONにして、発振手前まで上手く調整すると、4μV程度でS/N10dbが得られました
いわば再生方式の受信です
同時に、選択度が向上します
これらのことは新製品紹介記事にも記してありました
ただ実践時に、どれだけうまく調整して対応できるかは、オーナー次第でしょう

その昔、3.5MHz帯AMで電波を出しだしたころ、5球スーパー改造受信機を使っているというシャック紹介を多く受けましたが、確かに実用できそうです
2021.08   JA4FUQ

FANTAVOX HE-50 
上記、SR-40の兄弟と思われます 
型式だけ見ると、LAFAYETTEの製品のように見えますが、内蔵トランスはAC220V用で、EU(UK?)向けモデルと思われます
全体的に明るい、シルバー基調です

以下、SR-40との違いだけをピックアップします
こちらが、AC220V地域向けに用意されていた状態というか、元のトランス内蔵時の様子です
スピーカーとメインVCの間のレイアウトは、SR-40と少し異なります(球数が違います!)

AFのアウトプットトランスは、右に避けて写しています
その外したトランスです
単巻きトランスです

結果、SR-40と同様のトランスレス式の電源となりました



スピーカーの左に見える黒いトランス
AFのアウトプットトランスとして配線してあります
が、よく見ると100/200V:12Vx2 の電源トランスです
音は出ますのでウルトラCの使い方、でしょうか
電源トランスのこんな使い方、初めて目にしました
いつかのオーナーの手で、取り付けられたものと思われます

さて、本機はご覧のように5球構成です(まさしく5球スーパー)
SR-40のダイオードによる整流とは異なり、整流管35W4が採用されています
ジャンク箱の中から、手持ちのアウトプットトランスに交換しました
多分、9R59から取り外したもので、シャーシ加工しなくて取り付く場所に取り付けました
元アウトプットトランス(電源トランス)が取り付いていた場所です
本来、得られる音です
パネルの違い FANTAVOXの表記があります
ツマミの形状も、SR-40とは異なります

機能として、SR-40にはあるANL(ノイズリミッタ)と、TONE切替スイッチがありません
よりシンプルに・・・でしょうか
もちろん、型式表記が異なります
SR-40とは、Sメーターも雰囲気が異なります(メーターパネルが異なります)
メーターカバーは、オリジナルではありません
割れていたので、手元にあったもの(元SR-40のメーターカバー!)に交換しています
シャーシ―下側の様子
AF-VRが、いきなりフロントパネルに取りついています
ダイヤル照明ランプも、なんの工作なく普通に取りついています
この辺りは、SR-40に比べ、少々手抜きされているようです(ローコスト化)

電気的特性については、特に記すことはありません、それなりです 
AC100V動作では、ダイヤル照明ランプは、ぼーっと点灯です(8V 0.15A)の球が取り付いています)。
単純にヒーター電圧を加算すると、5球で121Vになります
直列に入るダイヤル照明ランプの余裕がない・・・全体に低いヒーター電圧で稼働しています(12.6V管が、11V弱)

空いた時間で、7MHz SSB受信に挑戦してみました
AFゲインボリュームが復調に影響します
BFOをほとんど(8割がた)時計方向に回した位置で、かつAFボリュームが12時から13時くらいの位置で、スプレッドダイヤルを慎重に操作すれば、なんとか復調できることが分かりました
ただし、ある程度強力な局だけです
2021.09    JA4FUQ 

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