Hallicrafters  SX−140
3.5〜50Mhz帯をカバーするアマチュア無線専用受信機です
この後、ケースを再塗装…現在はブラックです!

SX-140受信機は、ノービス・クラス(※)用にHT-40(左写真)という75W入力の送信機とセットで企画された受信機です
HT-40
  ファイナル 6DQ5 シングル
  3.5〜50Mhz帯 AM/CW 
  外部VFO HA-5が用意されていました

※HF CW と、VHF CW&Phone 入力75Wまで
   参考  Heath-kit HR-10B 受信機
Heath-kit DX-60 送信機
1961年の発売   東京オリンピックの3年前です(昭和36年)
TRIO(現JVCケンウッド)より発売された、かの高名な?9R-59の登場は1960年、こちらもプロダクト検波は採用されておりません
60年代前半は、まだまだSSBは特殊というか、ほとんどのハムは手にすることの無かった電波形式でした(私の体験では、SSBの普及は1668年くらいから)

さて本機ですが、わずか5球で構成された、高一中一のシングルスーパー方式を採用した受信機です
IFが1650KHzという、ハリクラフターズお得意の周波数構成が採用されています
この時代には、よく見られた方式です
高級機では、IF:1650KHzから、もう一段455KHzとか50KHz台に落として選択度を稼ぐ、国産ならSR−700などが、この方式を模したものです
一方では、BCラジオを親受信機にして、短波を聞く・・・DELICA プラグ・イン・コンバータでも、1500KHzに出力する方式が採用されていました

さて、本題に戻って、ノービス・クラスには、HFのPhone(SSB)の許可はなく、SSB受信は補助的であったと思われます
本機の特徴になると思いますが、IF増幅管のサプレッサ・グリッドを浮かして発振させることでBFOの代わりをさせています
言わば再生方式を採用、です
この再生状態の変化により、帯域幅の調整・・・マニュアルによると8KHzから2KHzの間で可変が出来るとあります
確かに選択度の変化は認められますが、利得の変化も大きく使い勝手が良いかどうかは微妙です
CW/SSB受信時には、ほぼ時計方向に回しきった位置で、多少BFO周波数の変化が可能です
実際の受信に於いては、信号が強いとビートがかからず、AFゲインを高く固定して、RFゲインを絞ってちゃんと復調するよう調整する、こんな操作になります
それなりな音質で受信することが出来ます
帯域幅が広いため、例えば7MHz帯などに於いては、混信が多いというか、SSBで言えば、復調できない信号が同時に聞こえるというような感じになります
最後は自分の耳で選択して聞く・・・原始的?な受信方式ではありますが、必要かつ十分な感度が得られていることには正直驚きます(下段表参照)
こちらが特徴的なBFO回路です
AM受信時には、帯域幅の調整が出来るとあります(8〜2KHz)
再生受信に近い感じで、発振手前が一番感度も上がり、選択度も向上します
BFOは、この発振状態を利用、です
この回路が、実際どんなものか使ってみたいという興味が、この受信機を手に入れた理由のひとつです

CW/SSB受信時には、AGCはOFFとなり、T2 IFT のAは、47KΩの固定抵抗で接地されるようになっています
CR1は、シリコンダイオードで、R17で電圧を上げていけば、あるところから電流が流れ、導通することになります
ここでBFOとして動作することになります
強い信号に対してはビートがかからないため、実際の受信に於いては、AFゲインを(ほぼ)一杯上げて、RFゲインを調整して受信するという形を取ります
当然Sメーターは、役に立ちません!

同調調整は、ANT−TRIMだけ、回路も運用も極めてシンプルに考えられています
RF/6AZ8==OSC・MIX/6U8A==IF/6BA6==AVC・DET・1stAF/6T8A==メーターAmp・AF/6AW8A 以上の、わずか5球の構成です(1/2 6AZ8は、キャリブレータ発振用)
それでいて必要な感度などきちんと得られる・・・人間の耳をアテにはしていますが(当然ですが!)、ある意味非常に良くできた受信機と思われます
21MHz帯以上のバンドは、局発の2倍高調波を利用してあり、CWのビートがある程度濁るのは致し方ないかと思います
14MHz帯以下のバンドでは、SSBを受信しても周波数安定度に大きな不安は感じません
糸掛けダイヤル方式のバンド展開ですが、チューニングにも不安はありません
劣化していたコンデンサ類・・・電解/チューブラ(オイル?ペーパー?)コンデンサは、その程度によらず全て交換しました
8〜40μFの電解コンデンサは、全て手持ちの47μFに
AF段カソードに入っている50V10μFは、手持ちの160V10μFに交換
0.1μFは、やはり手持ちの400V耐圧メタライズド・フィルム・コンデンサに交換しました(この写真に写っていないものが、あと1個あります)
シャーシ上面
FT243空きソケットは、マーカー用のものです
3500KHzのクリスタルが入手できれば、差して使おうと思っています
極めてシンプルなシャーシ上のレイアウトです
中央下からアンテナ入力、反時計回りに信号が流れて左下で、オーディオ出力です
これまた無駄のない流れです
シャーシ底面
電解コンデンサ、チューブラ(オイル?ペーパー?)コンデンサは交換済みです

バンド切替SW(3段)
一番上のコイル群がOSC
6バンド分あります
中央の部分が、RF出力・・・個別に調整できるのは、21Mhz帯から上の3バンドのみ
一番下は、アンテナ入力コイル群で、同調はフロントパネルにあるANT−TRIMで行います
選択を含む聞き取りは自分の耳次第、単に聞こえるかどうかということでの計測値をご紹介します
RF1段、IF1段 プロダクト検波なし!・・・SSB/CWは、RFゲインVRから手を離せないようなスタイルでの受信ですが、聞こえるか聞こえないかという点では、非常に高い感度が得られています
BAND(MHz) AM
30% 1KHz 変調ON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度
ビート受信(CW/SSB)
RF信号のON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度
3.5 2.5μV 0.8μV
1.5μV 0.3μV
14 0.5μV 0.2μV
21 0.6μV 0.2μV
28 0.7μV 0.2μV
50 1.3μV 0.5μV

14MHz帯AM受信事例
再生(帯域調)VRで、発振寸前(狭帯域)状態  0.5μV
再生(帯域調整)VR反時計方向いっぱい(広帯域)状態  0.7μV

3.5〜14MHz帯に於いては、RF増幅プレート側同調コイルは固定です
21〜50MHz帯については、ちゃんと調整できるコイルが単独で採用されています
この差が影響していそうな結果ですが、ローバンド対策で敢えてこうしてあるのかも知れません

いろんな面で、なかなか興味深い受信機です
また、受信機の基本を教わるようなところがあります
高一中一構成の利得で、十分実用的な感度が得られる
現在の最新式の受信機と、この60年近く前の受信機で、言うほどの根本的な差異はないと言えます
如何に楽に受信できるかと言うところに、手間(コスト)をかけているんだということを改めて思わされます

この先ですが、DELICA プラグ・イン・コンバータの親機に、IF:1650に直接、あるいはMix入力部に接続出来るよう、一部工夫をしてみようかと思っています(150KHzの差は、DELICA側で対応)
また、フロント・パネルと内部シャーシは非常に綺麗なのですが、ケースがみすぼらしいので(傷だらけ)、何かの便で再塗装をしたいと思っています
2018.05   JA4FUQ

無線機歴史博物館に 戻る


週間クールサイトに選ばれました
無線LAN専門サイト
青電舎:担当 堀
   Mailは seiden_atmark_po.harenet.ne.jp
              (お手数ですが、_atmark_を @ に直して下さい)
      お電話では、(086)275−5000 
      FAXは、0120−545000
      〒703−8207 岡山県岡山市中区祇園433−6