Uniden 2020

350W × 165H ×333D 重さ18Kgと、やや大型です

USでは、Henry Radio社により TEMPOブランド/TEMPO 2020 と名打って売られていました(あのリニア・アンプで有名なH社・・・他の一例で、TEMPO-ONEは、YAESU FT-200 です)
外部スピーカーは、USにてHenryRadio社から売られていたTEMPOブランドのものです
MICコネクタ:オリジナルは、4Pです、このものはICOM 8Pに合わせました


本機、見た目で一番の特徴である周波数表示
       
周波数表示部のアップです
14.1(100KHz台)までが7セグメントLED
50(10KHz台)以下が、縦方向に回るドラムでアナログ表示します(ハリクラ HQ-215は、横行ダイヤルですが、こちらは縦行)
100KHz台の切替は、メイン・ダイヤル右に配された、押しボタンSWで行います
ご覧のようにシンプルなリア・パネルです
DC-DCコンバータ放熱フィンも見あたりません
輸出を意識してでしょう、フォーン・パッチの入出力が用意されています
FT-101シリーズが華やかし1975年に発売された、同様のハイブリッド構成のトランシーバです
終段管は、6146Bパラレルです
Uniden・・・当時は、輸出向けのCBトランシーバなどで、USに対しても大変な強みを持っていたように記憶しています
まず本機ですが、VFOが特徴的で100KHz毎のカバーで、表示もデジタル2-3桁+アナログ(縦方向に回転)でした
IF:6187KHzのシングル・コンバージョンタイプ、そしてキャリア発振はひとつで、フィルタを切り替えてモード切替を行う、言わばDrakeと同じような方式を採用(LSB、USB、CWの3本のフィルタを搭載)、カーソルひとつで周波数が読み取れる構成です
すなわち、この時代の定番・・・モードを切り替える毎に、すなわちキャリア周波数を切り替える度に、カーソルを校正するためのキャリブレーションの必要はありません
またPLL方式を、少なくとも日本のアマチュア無線界で初めて採用しています
VFOと局発を含めて安定化・・・通常のコンバート方式より周波数安定度は良いはずです
また、トランシーバにありがちな送受兼用部分は最小限に、RF部は送受別に用意されています
あのFT-101シリーズの、ひとつ上を狙ったものと思われます
電源は、AC/DCいずれにも対応・・このあたりもFT-101ライクです
当時の価格ですが、FT-101Bが¥149,000のところ、本機は¥169,000だったように記憶しています
筐体サイズもそうですが、101Bが15Kg前後だったのに比べ、約18Kgと、重さも一回り上です
シャーシ底面
右上は,RF部
各バンドごとに割り振った同調VCが見えます
VFOを挟んで、左上はAF〜IF部です
左下から中央にかけては電源部で、その右(右下)は、終段部です
シャーシ上面、フロントから見て右側
Mix〜RF/ドライブ部、そして終段
終段部は、シールドを外しています
終段管は、6146Bパラです
シャーシ上面
フロントから見て、中央から左です
縦型のドラム状のスケールは、0〜100KHzの表示用
その後ろは、VFO部
その下は、AF〜IF部
電源トランスの下に見えるのは、DC-DC用のトランジスタです
ここに内蔵のため、リアパネルがすっきり
冷却風は、この放熱フィンからトランスの上を通り、ファイナル部に流れ、背面に排気されます
フロント右横
RF部の右に立っている基板部です
ヘテロダイン用クリスタルが10個
アマチュア5バンド(28MHz帯は、4バンド分割)に加え、27MHz帯と15MHz帯の受信ができるようで最初から内蔵されています
フロントパネルを分解して、壊れたSWの交換や清掃を行います
40年以上昔のパーツが使われているわけで、全く同じものの入手は出来ません
似たような(使えそうな)ものを探すことになります
使用してあるパーツですが、良いものが使ってあります
この頃は、Made in Japan 勢揃いです

余談
トグルSWですが、一回り/僅かに縦方向のサイズが大きいものしか入手できませんでした
ヤスリの登場です
旧型無線機から取り外した同型のSWもオークションには見受けられましたが、ここはヤスリを使ってでも新品をピックアップしました
これだけ分解すると、写っていないリング(枠)を含め、掃除のし甲斐があります!
もちろん限界はありますが・・・
特徴的なダイヤル表示
○○.○□□MHz
○が7セグメントLED
□以下が縦方向に回るドラムでアナログ表示します
左写真は、80KHzをカーソルが示しています
9MHz台で100KHzの展開のせいもあるでしょうが、非常に直線性の良い・・・すなわち驚くくらい正確な周波数表示が得られています
101ライクな、プラグイン/ユニット方式が採用されています
またご覧のようにフロントパネルを90°倒してメンテすることが出来ます
VFOシールド・ケースの上に乗っているような金属箱は、デジタル部(PLL&表示部)です
RF(ノイズ)対策でしょう、金属ケースに収納されています
VFOは、9138KHz〜9038KHzの100KHzを発振/カバーします
クリスタルフィルタは、ご覧のように、LSB・USB・CWの3本を搭載
この方式の採用で、ダイヤル・カーソルは1本で済むことになります(モード毎にカーソル校正をする必要がなくなります)
フィルタ基板の上に見えるTrは、DC−DC用
この下に、平滑用電解コンデンサが並んでいます
電源トランスを挟んだ右側が終段部分です
DC−DCヒートシンクは、外に出っ張っていない分、筐体が大きくなっています
細かいことですが、ファイナル管もプレートVCを中心に左右対称になるように配置されています
RF部分 見えている真空管は、ドライブ段の12BY7A
バリコンに注目・・・各バンドに1セクションを割り振る多連(6連)のバリコンが採用されています

多くの機種について、受信RF段と送信ドライブ段の段間コイルは兼用されている場合が多いと思います
ドライブツマミの位置が、送信のピークと受信のピークが一致しないと言う経験もおありでしょう
本機では送受完全に独立した設計になっています(基板そのものが別)
本機では、ドライブツマミに全てのVCが連動するよう、チェーンを使って結ばれています
右サイドを撮せば、バンドクリスタルの発振ユニットが・・・
回路別に独立した基板構成で、連動した切替のために、やはりチェーン駆動が採用されています
最後に、シャーシ下側を撮したものです
右半分近くが電源とファイナル部です
白く見えるBOX部は、VFO部です
その下が、プラグイン構造になっているソケット群です
VFOの上側は、受信RFユニットです
プラスティック製のベベルギアで、多連VCが駆動されています
ワイヤー・ハーネスを使って、整然と組み立てられています
ここまで見るに、こと修理・調整に関しては、やりやすい構造が取られているというのが実感です
プラグイン/ユニットも、調整VR類は、全て上からドライバで回せるような配置になっていますし、IFTもフロントパネルを倒すことで、前から調整ドライバが使えるようになっています

現役に耐えるまでの取り組み


年数の割には(内部の部品から1976製だと思われます、40年選手と言うことに)、まま状態は良いと思われるものを入手しました
そうは言っても湿気の多い我が国のこと、ロータリーSWなどは、念入りにクリーニングするところからスタートです(接点の接触不良による表示不良など散見されました)
部品的な故障は、フロントパネルにあるSW類・・・沢山並んだプラスチックレバーのトグルSWが2個と、上蓋を止めるナイロンラッチが壊れていました
あと、10W〜50W(ファイナル1本)改造の痕跡か、ファイナルの6146Bの片側に5.6Ω10Wのセメント抵抗がパラに入っていました
ファイナルを2本にするときは、当然取り外さないといけない抵抗なのですが、取り付いたまま管が2本差し込まれていました
この状態で何が起きるか・・・片側6146Bのヒーターには、8V位掛かり、抵抗がパラに入った6146Bには4V程度のヒーター電圧しかかかっていない・・・当然6146B2本は正常動作にはなりません
プレート電流はそれなりに流れますが、パワーは50W程度しか出ていませんでした
さて、ヒーター電圧の高くかかったものと、低くかかったもの、どちらの6146Bがダメージが大きいでしょう?
折角の機会ですから?確認をしました
意外なことに、2本の動作に差がない・・・
パワーが50W程度しか出ない、この原因はプレート供給電圧でした
プレート電圧が半分に減圧されていた(やはり10W改造の名残り?)せいもあるのかもしれませんし、この状態での運用時間が短いのかも知れません
結果として6146Bに、大きなストレスとしては、かかっていなかったようです
正規の配線に戻すことで100W前後の出力が得られるようになりました

受信について、やたらとSメータが振れます
後で原因が分かりました・・・AGC OFFの状態でした(AGC切替トグルSWが壊れていた!)
AGC OFFで、Sメータが振れないのではなく、AGCがOFFされることで、ゲインを押さえ込まない状態でのSメータ表示をするようになっています(その上、Sメーターフルスケール調整でやたらと振れるようになっていた/RFゲインを最大絞ったところで、フルスケールになるように調整してあった)
この方式でのAGC-OFF、例えば、アンテナ利得やパターンの測定のおりには、非常に有益なS表示です
最近、このような手法を採用した無線機を見ていなかったので、つい変だと先に思ってしまいました、反省!
本機は、アッテネータとRFゲインコントロールは、別々に独立しています

調整としては、Sメータ回路とRITセンター周波数調整、RFトラッキングだけで済みました

VFO
100KHz展開を取っただけのメリットは十分にあると思います
周波数読み取り精度と安定度は、素晴らしいものがあります
もちろんデジタル方式と比較するものではありませんが、ダイヤルを回した変化には、アナログ方式の良さがあります(デジタルのような階段状の変化ではな、気持ちの良いリニアな変化です!)
ダイヤル1回転で、おおよそ30KHzの変化です(100KHz幅を3回転でカバー・・・Watchが早い!)

最終チェック
受信感度
SSB/CW
  0.2μV 全バンド S/N10db
AM
  0.6μV 全バンド S/N10db 受信フィルタはUSBを使用、AMフィルタ・オプションはありません
  1000Hz 30%変調時

送信入力
  SSB/CW     全バンド おおよそ180W/IP:220mA程度 
                  出力:80〜100W
  AM(低電力変調) 全バンド おおよそ90W/IP:100〜120mAに調整
                  出力:20〜25W程度

ファイナルSG電圧もツェナー・ダイオードで安定化してあるし、ALCは増幅型の採用と、各所のポイントはしっかり押さえてあります
シールドもそうですし、きちんと貫通コンデンサを通して通電させています
基本に忠実な設計ということで、なかなか良いギアであるというのが最終的な感想です
受信した感想ですが、しっかり安心して聞ける・・・良い音でふわふわした感じで聞こえるのではなく、野太い音できちんと聞こえる感じがします(表現が難しい! 101シリーズの、あの堅い音色とは全く別物です)
 
当時の人気機種、FT−101Bを強く意識している点は違いないでしょう
1.ハイブリッド(半導体中心+真空管)構成
2.標準でAC/DC対応
3.AM送受信対応(11mBANDの用意もある AMフィルタ・オプションがあるのはFT-101シリーズのみ)
4.オプションの少ない標準化が進められている(海外輸出を意識している)
などについては、共通な仕様となっています

ひとつ上を狙った点としては
1.ダイヤル読み取りに、モード切替による校正が不要(キャリアはひとつで変化しない)
2.一部とはいえ、表示をデジタル化 
3.極めて安定なVFO
4.RITが2段階  ±1KHzと、5KHzに切替対応が可能
5.RFゲインコントロールとは独立した可変RFアッテネータの採用
6.終段管は、テレビ水平出力管では無く、きちんとした送信管(6146B)を採用
7.CWフィルタ(−6db帯域幅600Hz)を標準装備
8.メイン・ダイヤルにTIGHTコントロールを採用(回転のタッチ/重さが調整できる)
などが挙げられます
きっと YAESU 101 の牙城を崩そうと、企画された商品でしょう
全体を見回して、メンテ時のことも含め、凝った設計といえます(基本に忠実な設計と言えばその通り!)

一方、垢抜けしたデザインは、FTー101シリーズでしょうし、終段プレート同調に減速機構がないのは、ちょっと使いづらいと思える点です(テレビ水平出力管ほど、調整時のプレート負荷が大きくないと言う判断かな?)
また、RFスピーチ・プロセッサを内蔵し、ALC動作もおっとりした101シリーズの良く飛ぶ(トーク・パワーが大きい)無線機に対して、こちらは大人しい音質(電波の質)重視の無線機という感じを受けます
2017.06  JA4FUQ



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