NEC CQ-210
その昔、あのNEC(本体では無く、新日本電気)から発売されたHFトランシーバです
160mバンドから11mバンドを含み、10mバンドまで、CW、SSB、AM、FSKでカバーします
またJJY・WWV 15MHz帯の受信が出来ます
ドライバ、ファイナルほか7球以外、半導体化され DC-DCインバータを搭載 DC12V運用もOK
まだ真空管のほうが優位と思われた部分が残る、ハイブリッド設計ということでしょう
デジタル表示も鮮やかな、電源一体型トランシーバです

こちらは、多分1975年頃の発売ではないかと思います
その前に、国内ではCQ-110というモデルがありましたが、海外に輸出されたモデルは、このCQ-210が圧倒的多数だったと思われます
海外モデル、CQ-110eは、回路図を見るとCQ-210です
¥298,000と言う金額が付いていた思います
おそらくですが、このCQシリーズは、フロンティア・エレクトリックのOEMでは無いかと思います
FT-101同様に、特にUSにおけるCBニーズに、かなり出回ったのでは無いかと想像されます

構成のほとんどを半導体化した、プリミックス IF:9MHzのシングル・コンバージョン・タイプを採用
IF:9MHzは、YAESU FT−200FT−501と同じです
特徴的なのは、送信ファイナル・ドライブ以外に、受信のトップにも真空管が採用されていること
この点はFT−501も同じで、こちらはまさに下段でご紹介の「DIGITAL 500」と二アリーイコールの設計です

FT-501は、真空管7本構成
   6BZ6 − 6U8− 9MHzIF
            |
           6CB6 プリMix(5MHz台VFO+クリスタルOSC)
            |
  9MHzIF − 6EJ7 − 6GK6 − 6KD6x2

DIGITAL 500は、真空管6本構成
  上記FT-501では、6U8のところが6AW8で、ドライバが6BQ5、プリMixはバイポーラTr
  あとの構成は同じです

CQ-210は、真空管7本構成
   6BZ6 − 7360 − 9MHzIF
            |
           6EJ7 プリMix(5MHz台VFO+クリスタルOSC)
            |
  9MHzIF − 6EJ7 − 6BQ5 − 6JS6Cx2
  ドライブ 6BQ5は、一見珍しく見えるかも知れませんが、6GK6と同等です

 それ以上に珍しいと思われるのは、7360をMixに採用している点で、メーカー品では本機だけの採用かも知れません(平衡変調に採用されている例は、多々あります)
 高感度を得ること、混変調に強いことを期待した設計と思われます
 実際にどれだけの効能が得られているものか、興味があります

CQ-110は、真空管4本構成で、7360の採用はありません
  受信TOP:6BZ6、送信ドライバ:6BQ5 フィアナル:6JS6 x2です


DIGITAL 500
1970年(FT-101登場の年)に、フロンティア・エレクトリックから発売された、多分国内最初のディジタル・ディスプレイ(ニキシー管)採用のトランシーバです(DIGITAL 500 AC電源一体モデル)
6KD6x2 500W PEP をうたったもので、回路構成は、YAESU FT-501あるいは、NEC CQ-110によく似ています
確か、¥189,000とかいう金額が付いていたような気がします
USでは、Robynブランド、あるいはSBEブランド(SB-36)で販売されていました

同社では、Super600GT(6146Bx2)、Super1200GT(6KD6x2)という、アナログ・ダイヤル・モデルも出していましたし、14MHzの八木アンテナも販売していたような記憶があります

余談ながら、ここまで登場した型式の無線機は、HF5バンドで160mバンドのカバーはありません

フロンティア・エレクトリックは、SB-2000/4000というリニア・アンプが有名ですが、型式が3500LAだったと思いますが、6KD6x5のリニアンプも販売していました
TRIO TL−911(こちらは6LQ6x5)が採用しているように、SGには安定化したB+をかけたABクラスアンプでした(TL-911もOEM? YAESU FL-2500は、事実上ベタコンGG)

SB-36

CQ−301
写真左は、NECブランドで、CQ-110eにセットでオプション設定されていたリニアアンプ CQ-301です
これはどう見ても、SB-2000です

これらの状況から、このCQシリーズは、フロンティア・エレクトリックのOEMではないかと推測出来ます
余談ながら、CQ-201は、110e外部VFOの型式ですが、実物は見たことがありません!

前置きが長くなりました 入手したCQー210について、本題です
こちらが、ケースを取り外したときの上面の様子をフロント側から撮したものです

ほとんどのものが、シールド板に囲われていて、何も見えません

VOX関係の調整などは、上蓋を開けるだけで、調整できるようになっていますが、調整には調整ドライバーは必要です

上面をリア側から撮したものです

配線などは、ほとんど見えず、シールド板オンパレードです
RF部上面です
シールドケースを外して撮しました

真空管5本が見えます

最も特徴としてあげたいのがMixに7360が採用されている点
SSG2台と2信号特性測定用パッドで、色々比較をしてみたいところです

前モデル:CQ-110より真空管が3本増えています!?
また、シールド等も、ずいぶんと強化された感があります
ファイナル部分です
シールドケースを外して撮しました

6JS6Cが2本です

高さの点から、ソケットはシャーシより沈めた取付になっています

YAESU FTーDX401採用のファンと同じサイズで色違い、でした

プレート同調VCに、減速機構は付いていません
RF部の反対側のサイドを撮しました

手前のシールドBOXがIFユニットが収納されている場所です

こちらも特徴のひとつになるかもしれません

海外ではDrake、国内ではTRIO TS-900ユニデン2020が採用した、キャリアひとつで、フィルタでもってモード USB、LSB、CWを切り替えるもの
ダイヤルカーソルが動かない、一本で済むというのが最大のメリットです
デメリットは、コスト増!

写真はIFユニットをシールドケースから取り出して撮したものです
IFは、9MHzです
長年の放置(保管)の結果、ロードVCを駆動するゴムベルトは、見事に劣化していました(切れていました)
プーリーの構造から、糸掛けでも良いかなとも思ったのですが、ここはチェーンで駆動することにしました
こちらがシャーシ底面です

大きなシールド板の下が、RF部です

アルミの箱に見える部分は、VFO部、その下はキャリア発振部です

シャーシ補強の横板が入っています
こちらは、シャーシ底面のRF部のシールドを取り外して撮しています

RF同調VCはタイト製で、大小2つのローター/ステーターが2組連動です
もしやコールド側を浮かしているのでは、と期待してみたのですが、残念ながら直列にCを入れてグランドに落としてありました
こちらは、リアパネル

FSK、FAX−SSTV用に単独に接続コネクタが用意されているところなどを見るとバブリーな?70年代を感じます

電源コネクタは、ずいぶんと頑丈なものが採用されています


ダイヤルツマミにスケールが付いていません
最低必要な修理、修復作業を終えて、あとは最終調整だけ・・・良い感じに仕上がってきました

VFO/XTAL切替ツマミは、純正ではありません

メインノブの早送りスタッド?も欠品しています

シーメンス・キーの採用も珍しいし、ヘッドホン端子が右に離れて配置されていることも珍しいです
ディジタル周波数表示に依存していて、ダイヤルのリニアリティは良くありません
おおよそ1回転当たり20KHzですが、500KHz巾の上下ではかなり違いがあります
このことが分かってと言うか、気にしなくて済むようスケール無し、と思われます
ディジタル表示が、いわゆる手抜きに使われた・・・割り切った設計だと思います

モードSWが固着して全く動かない、メーターもムービングコイルが固着、VFO/XTAL切替SW,バンドSWや送受切替リレーもひどい接触不良と、長期保管の弊害が一杯あり、本当に元通りに動くところまで戻せるか不安がありましたが、一生懸命清掃!に努めた結果、なんとかなりました(機構部品が壊れたとなると、まず修理/修復は困難・・・入手できない!)
最低の動作は得られましたが、AGC SLOWのC(10μF50V)が容量抜けしているようです
あと、RIT(FINE-Tune)のセンターを合わせる方法が無い(多分)、周波数カウンターの基準周波数の調整がやりにくい構造だし、周波数表示誤差のキャリブレーションが別に用意してあり、その調整範囲内に全体の周波数が収まるよう局発周波数の調整、などちょっとお悩みが残っています


BAND(MHz) AM
30% 1KHz 変調ON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度
CW/SSB
RF信号のON/OFFで
S/N10dbが得られる信号強度
1.9 1.0μV 0.2μV
3.6 1.0μV 0.2μV
7.1 1.0μV 0.2μV
14.2 1.0μV 0.2μV
21.2 1.5μV 0.5μV
28.6 1.5μV 0.4μV


BAND(MHz帯) CW送信出力
1.9 130W
3.5 140W
140W
14 140W
21 60W
28 90W
終段6JS6x2 に、670V 印加

※21MHz帯のゲイン不足(送受とも)原因不明・・・
  解決できれば、受信感度もUPするでしょうし、送信パワーも100W以上得られると思われます

時間がたつと、またまたトラブルが・・・増えた!!

スプリアス測定をやってみようということで、久々に取り出して動作をさせてみました
通電すぐに、パチッという音とともに5Aのヒューズが飛びました
怪しいのは高圧整流回り
平滑コンデンサは無事でしたが、高圧性整流ダイオードの中に逆方向の抵抗値の低いものが2本
念のため、高圧整流にかかる8本のダイオード全てを交換
この作業中に、パチッという音がしたであろう原因を発見
この整流基板上の抵抗間に、スパークの飛んだ跡が見られます
埃がたまって湿気を吸って、そこから火花が出て出火・・・コンセントの出火事例を目にしますが、どうもこの現象が起きたみたいです
半田のヤニと、そのヤニにくっついた埃をアルコールで拭き取りました
ヒューズが飛ぶ問題はこれで解決

次に生じたのは、感度や出力が安定しない…ショックを与えたり、シャーシをひねったりすると状態が変化します
原因は、アンテナ切替リレーの接点接触不良
なんとか同じ型式のリレーが入手でき、交換して解決です

そうしているうちにやはり?パチパチ放電の音が聞こえてきました
今度は、RFユニットの基板下から接続するコネクタのピンの間で火花が出ています(こちらは中圧:300V強)
こちらも半田のヤニの上に貯まった埃が原因です
上記同様にお掃除しました

感度計測を行っていると、受信中に突然バリバリと大きなノイズが聞こえます
今度はバンド切替SWの接点と、SWのシャフト間で小さな火花が散っています
ベークライトの絶縁不良が生じています
どうしようかと思ったのですが、とりあえず放電箇所に接着剤を少し塗布して絶縁強化を図ってみました
当然ですが、接点に接着剤が着くとマズいですので、ここは細心の注意でもって・・・・今のところ無事です

AGCが常にFAST状態では、SSB受信には耐えがたいので、強引に(既設のチューブラ型電解Cの足を切って)新たに積層セラミック(10μF50V)を半田付けしました

その結果が、上記の表です
受信感度は、リレーの交換で本来の状態に戻ったようで、14MHz帯以下はなかなかの感度です
21MHz帯のゲイン不足の原因が分かりません・・・28MHz帯より低い感度、パワーです
ハイバンドに関しては、そこは真空管の採用がアダになっているようで、ご覧のように少し感度低下がみられます

一度整備をしていても、また時間が経過すると、いろいろ症状が出るものです
 2022.07−2023.10

見た目は、先代のCQ-110も、このCQ-210も大差が無いというか、ほとんど一緒(「f CAL」の有無だけか)ですが、電気的、あるいは高周波的構造には、ずいぶんと違いがあるように思いました(明らかにバージョンアップした!) 
その変化の中で、時代の流れに逆らって、真空管の採用が増えたところは興味深いところです
2018.09   JA4FUQ

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