ICOM IC−720
手持ちがあった、当時の純正電源装置(IC-PS15 20A定電圧電源)と並べてみました
ご覧のように、本体は、非常にコンパクトですし、35年という時を感じさせません

多分ですが、ゼネラル・カバレッジ受信を可能にした国内最初のトランシーバだと思います
アップ・コンバージョン方式(1stIF:39.7MHz)を採用した、国産最初のトランシーバではないかと思います(業界の先駆けは、Drake TR-7
1980年の登場です

80年当時、TRIOは、TS-120/180、八重洲は、FT−107の時代で、ゼネカバ(送受とも!)の FT-ONE が発売されたのは、1982年です(まだまだ主流は、ファイナルが真空管のマシンという時代  TS−820/FT−101Z等)
アイコムが、PLLほかデジタル技術の取り入れについては先進的であったことが、この歴史からもよく分かります
このアップ・コンバージョン方式は、その後SDR方式の登場(2016年1月 IC-7300が登場)まで、主流として続きます(今も続いています!)

さて、アイコム(井上電機製作所)のHF参戦は、1967年のIC-700T/Rが最初だったと思います
:IC-700R

右:IC-700T
八重洲FL-50/FR-50と同じような、高い周波数帯ではVFOの安定度が問題となる、シングル・コンバージョン・タイプのものでした(送信機は、VFOを内蔵しないところも一緒)
八重洲FL/FR-50との大きな違いは、送信終段/ドライバ・ミキサ以外は、全て半導体でした
  700Tは、S2001×2本を軽く使って50W ドライバ・ミキサは、いずれも12BY7A 他は半導体
  700Rは、きっとFETを最初に採用したHF無線機でしょう
半導体の採用についても、アイコムは先駆者と言えます

それから10年後の1977年に、IC-710というこの720の先駆けとなったトランシーバを発売しました
オール・ソリッドステートで、当時としては斬新なデザインの、非常にコンパクトな本格的HFトランシーバです
アイコム(井上電機製作所)も、このデザインがお気に入りのようで、V/UHFのマシンまで採用されました
同じ型を長く使う・・・その後もこの動きは続きます
HAMバンドのみ(WARCバンドなし)対応のマシンでした(パスバンド・チューニングを含むトリプルコンバージョン/ダブルコンバージョン+)
720では、ゼネカバ受信対応と言うことでAMモード(送信も可能/ハムバンドのみ)を持っていますが、710では、SSB/CW/RTTYの3モードでした

ここからが、きっとアイコムのHFストーリーの始まりです
IC-7851も、アップコンバージョンのスーパー・へテロダイン方式に違いはありません

本機の大きな特徴? バンド切替の度に、ガチャガチャとRFフィルタを切り替える大きな音がします
VFOはデジタル・タイプで、ステップ当たり10/100Hzに切替が(1KHzステップの早送りも)可能です    
コンパクトさは、奥行きを見ても・・・
20A定電圧電源と、ほとんど変わりません
IC−PS15は、たまたま所持していたもので、こちらは見た目も歳相応・・・年期を感じるものです

本機ですが、35年以上の時間が経過していると思われますが、見た目は非常に綺麗です
でも、何もないはずはありません!

電源を入れると、ガチャガチャと動く、フィルタのバンド切替動作が止まりません(SWを回転させようとギアを叩くのですが、肝心のギアが回ってくれません)
ただただ、ウルサイだけです

この”音”の犯人は、左下写真にあるロータリー・リレーです
今なら、小型の高周波リレー、あるいはダイオードSWで対応するところでしょうが、当時としては小型化のためには、この手しかなかったものと思われます(IC-710も同じ手法がとられている)

たちまち修理というか、対策に手を出さざるを得ない状況です

この写真は、RFフィルタ・ユニットです
いかにもリレー風に左下に見えるのが”音源”です
1動作毎にギアをひとつ送る動作をします
そのギアでバンド切替SWを回すという仕組みです

本体上蓋を開けたところです(向かって左が、フロントパネル側)
35年という時間の経過が信じられないくらい綺麗です
ホコリや錆びも、ほとんど見あたりません
上写真のフィルタ・ユニットは、リアパネルの左に見える空間に収まっています(左写真では、ポッカリ隙間が空いて見えます)

何かあると保守性は悪い ・・・ 小型化を進めた場合のデメリットです
PLLほかデジタル技術周りにトラブルが生じると、その修理は大変そうです

本体下側に、変換/IFユニットがあります
AMフィルタ(元々オプション)が装着してありました

今回の取り組み(修復)内容
何が起きているのは、一目瞭然なのですが、解決には少々悩まされました
ロータリー・リレーを単独で動かせば、きちんと切替動作をします
が、コイルに3A位電流が流れます
これはどう見ても過負荷でしょうと、ロータリー・リレー、切替SW部の清掃とシリコン・グリスの塗布を行いました
コイル電流は2A位まで低減しました(電流制限をかけてテスト)
これでOKかなと期待して元に戻すも、きちんとは動きません
時折、SWを回す・・・あとは、無駄にガチャガチャを繰り返す
全く切り替わらなかった当初よりは、僅かに改善・・・程度です
SWしているTrを外して、テスターで当たったのでは異常はありません
外部から、ベースに電圧をかけても、きちんと軸がまわせる動きにはなりません、要は力不足です
ギア部を叩いているだけです
コレクタ−エミッタ間を、強制的にショートすれば目的の動作をします
こうなると、やってみることとしては、このSWしているTrの交換しかありません
一般的なパワーTrでは、改善がありません、同じ動きです
ここで少し騙されたというか、認識不足がありました
改めてオリジナル搭載Trの規格を見て、手持ちの中で唯一あった近い規格のTrに交換、サージ保護ダイオードもこの便に交換しました
さて結果は?
きちんと思う動作になりました
リレーコイル部の劣化であるなら、修理不能というところでした
劣化・・・今回は、半導体側にありました、良かった!!

あと気になったのは、ダイヤル表示と実際の周波数の差異・・・・この調整を行っただけで、ほかに問題は見あたらなかったので、スペックをチェック

■受信感度  
      0.25μV入力で
      14MHz帯では、S/N14db
      28MHz帯で、S/N10db が得られました
      元のスペックでは、0.25μV入力 S/N10db以上 です
      余談ながら、先行のIC-710のスペックは、0.5μV入力で、S/N10db 以上 です

■送信パワー
      1.9〜21MHz帯  110W前後(Max19A弱)
      28MHz帯 60W程度

 本機は、WARCバンドに対応しています

電気的には、劣化も見られず、元のスペックどおりの性能が得られています、素晴らしい!
この頃は、100W機でも電源容量は20Aで足りています!(余談ながら、先行のIC-710の純正電源は、定電圧ではありません)
      
          
ロータリー・リレーの動作以外、何の問題もなく、すぐに運用できる状態が得られました
当時を再現すると、このようになります
 2016.12   JA4FUQ

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