Hallicrafters  SX-117 受信機
ハリクラフターズ社 SX-117 80〜10m AM/CW/SSB アマチュアバンド専用受信機です
ご覧の通り、左右対称のパネル・デザイン・・・USで好まれるようで、一目でUS製品と分かります
281W 197D 375D  重量約8.5Kg

1962年発売当時の価格:$390という情報があります
トヨタ「パブリカ」が1000ドル・カーと言われた時代です。(1$=¥360の固定レートの頃です)
当時でも、HT-44という送信機(SSB/CW:100W AM:35W本機と見間違うようなデザイン!)とトランシーブ運用ができる設計でした
まだ、メカニカル/クリスタルフィルターが高価な時代で、トリプルスーパー構成で、選択度の向上のために、50KHzのLCフィルターとTノッチ・フィルタが採用されています
HT-44送信機も、PSN フェーズ・シフト・ネットワーク方式のSSBジェネレータが採用されています

余談ですが、むき出しのバリコンによる一般的なLCタイプのVFOなのですが、意外というか不思議というか、その安定度は非常に良かったです
その昔、 本機とは別の個体ですが、SR-2000と並べて使った時期が少しありますが、SR-2000より安定でした
もっともSR-2000の発熱の酷さ・・・・ここに起因する問題であったとは思いますが・・・ 
本機の構成
RF1段、IF2段のトリプルコンバージョンタイプの受信機です
1stIFは、6.5−6.0MHz 2ndIFは、1650KHz 3rdIFは、50.75KHz
VFOは、4.85MHz−4.35MHzを発振
ヘテロダイン用クリスタルを用意することで、3−30MHzの受信に対応
アマチュアバンド(WWV)以外に、4つのクリスタルを内蔵、切替が出来るようになっています
また、ヘテロダイン用クリスタルと合わせ、HA-10というLF/MFバンドチューナーをセットすれば、85KHzから3MHzまでの受信ができるようになる設定です(LF入力端子がリアパネルにあります)
LSB/USBのモード変更は、2ndIFから3rdIFに変換するクリスタルを切り替えることによって行われています
この処理で、BFOの周波数は一発でOK・・すなわち、ダイヤルカーソルは1本でOKということになります
選択度を稼ぐためのフィルタですが、メカニカルフィルタなどは高価だったため採用が見送られ、IFを50KHzまで落とし、そこにLCフィルタを用意して、という構造で
CW:0.5KHz  SSB:2.5KHz  AM:5.0KHz という選択度を得ています
またノッチフィルタですが、IF帯域幅の中で50db以上の低減ができます

IFが、1650KHzというのは、ハリクラフターズ社の十八番
例えば、1961年発売の SX-140 こちらの受信機でも採用されています
その昔、HF、あるいはVHFをBC帯に変換して受信するコンバータが流行った時期もありましたが、その名残りかも?です

送信機とトランシーブするためのクリスタルOSCと、VFO出力がリアパネルに用意があります
日本では、スター(STAR:後に八重洲無線に合併された)SR-700が、本機を真似た回路構成で作られました(1965年発売)
1960年代の日本
ちなみに1965年は、日本ではまだAM全盛で、SSBでオンエアすると珍局扱いされた、今では考えられない時代でした
また、自作が中心の時代で、メーカー製品を持つことそのものが贅沢な時代でした
トリオ(TRIO:現JVCケンウッド)からは、9R-59TX-88Aのベストセラーに続き、SSB機JR-300S/TX-388Sが発表された頃です(当時、この斬新なデザインには、皆が注目しました)
八重洲無線からは、FL/FR-100Bシリーズが当時最高級のマシンとして発売されており、無銭家にとっては本当に高嶺の花でした(本格的フィルタータイプで、トランシーブ操作可能)
SSBトランシーバというものは、まだ国内では市販されていませんでした(トランシーブ操作/送受一体操作が、まだ一般的に普及していない時代)
井上電機製作所(現ICOM)からは、50M/AM、144M/FMポータブル・オールソリッドステート・トランシーバが新登場した頃です
当時の50/144Mトランシーバーは、車載を中心に真空管式(特にファイナル部)が多く、ピィーというインバーターの音が聞こえる電波が多かった中(タクシーあがりの改造無線機が活躍していた)、オール・トランジスタという最新の技術を引っ提げての登場でした
リアパネルです

トランシーブに必要な出力
LF/MFバンドチューナーの接続端子など
ひととおりの端子の用意があります
全体を上から写しました
ヘテロダイン(バンド)用クリスタルはデフォルトの状態
3.5−21MHz帯、28.5−29.0MHzの5個の実装です

中央右寄りに見える2個のクリスタルは2ndIFから3rdIFに変換するのと合わせLSB/USBのモード切替を行うものです
Hallicrafters製品に使ってある受信管には、「Hallicrafters」のプリントがしてありました
ケースから取り出した様子
シャーシ上面です 
硬質アルミシャーシの採用で、錆も生ぜず非常に綺麗です
鉄シャーシが普通の国産品とは、一線を画します
4.85MHz−4.35MHzを発振するVFO部
ご覧のように、VCはむき出しです
下側もお見せしますが、こちらも発振コイルはむき出しです

3連VCですが、VFOには一番奥のローター部を使用
上に見えるトリマはトランキング用
手前の二つのローター部は、1stIFの同調用です

サブシャーシに乗っているのはマーカーです
100KHzクリスタル・・・GTベースです
丸いシールドに収まっているのは
50KHzノッチフィルタ「L」部
ダストコアをツマミで直接回す構造です
シャーシ下側、底面です
ワイヤーハーネスが使用されています
50KHz BFO部
ノッチフィルタ同様に、直接発振コイルのダストコアをツマミで回す構造です
VFOの発振コイルも、ご覧のようにむき出しです
メイン・ダイヤルの減速機構
Collins、あるいはHeath-Kit同様のフリクション・ドライブです
メインダイヤル1回転当たり、おおよそ11KHzです(9回転でおおよそ100KHz)

ダイヤル補正用の小容量VCが見えます
直接VFOの周波数を変化させます
RF−1stMIX/OSC部です
VFOのすぐ後ろに配されています
各コイルは、シールドケースに収めて、シャーシ上面に置かれています

RFチューニングは、バーニア機構で減速されています
例によってご老体ですから、トラブルは色々持っています
まず、無信号時のHUMが気になります
実際、感度計測時に問題になります(無信号時のオーディオ出力レベルが上がる=>感度が低く計測される)
+Bラインに、47μFの電解コンデンサを追加しました(ブロックコンデンサの容量抜け)
受信しない・・・VFOがきちんと発振していません
ダイヤルと、VFOの取付位置が、なぜかずれた状態になっています
無理やり目的の周波数を発振させようとした痕跡・・・???
このままでは、目的の4.85MHz−4.35MHzを発振させることが出来ません
原因は、真空管にありました
6EA8を交換して、発振周波数を合わせる調整をしました
繰り返し調整することで、おおよその目盛りではありますが(元々読み取り精度5KHz)、500KHz巾の中で±数KHzの誤差に収まりました
この点も優秀です(VCが優秀?)
あとは一般的な調整です
28.5−29.0MHz受信のためのヘテロダイン用クリスタル35.0MHzが約50KHz低く発振します
このままではどうしようもありません(新たに用意するしかありません)
ダイヤル表示マイナスおおよそ50KHzで、分かって使えばこのままでも良いかもです
HT-44に内臓のクリスタルと入れ替えてのテストはしていません

あらかたの調整を終えての計測値です
7MHz帯、14MHz帯において
AM 30%変調 ON/OFF S/N10db が得られる入力は 1.0μV
SSB/CWにおいては、RF信号のON/OFFで、S/N10db が得られる入力は 0.2μV
と、感度に関してはなかなかの結果です、最新の製品と大差ありません
     2023.09  JA4FUQ

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