JRC NSD-515
1981年の発売だったと思います
すでにトランシーバーが主体となったマーケットに残った、最後のセパレート機(送信機)かもしれません
先代はNSD-505で、こちらはアナログVFO(PTO)の採用、本機はデジタルVFOです
詳しく見ると、デジタル化はこのVFOのみで、他のヘテロダイン関係はクリスタルの採用で、PLLではありません
NSD-505のVFOを、デジタル方式に置き換えただけの新製品です
受信機との共通は、VFO周波数だけですから、バンド切替ごとにトランシーブのゼロインが必要です(その昔の、八重洲 FLdx400/FRdx400の、コンビネーションみたい)
決して使い勝手は良くありません
ラインアップとしては、受信機NRD-515が用意されていました(むしろ逆で、NRD-515に合わせて、,たいして売れないであろう送信機を用意した、というのがホンネかもです)
セミ業務(業務用受信機の予備として等)向けや用BCLも含め(むしろこちらの方が多いかも)、高性能を期待した受信ニーズが多く、実際のところこの送信機はそれほど多くは出回っていないように感じています(アマチュア無線限定で、かつ高額ですから!)
1.8MHz帯から29.7MHzの範囲のアマチュア無線バンドで、SSB/CW/RTTY、出力100Wの送信に対応します
電源は内蔵せず、13.6V20Aの電源供給が必要で、純正の電源オプションはNBD-515です
NBD-515を使用すれば、NSD-515の電源SWで、NBD-515のON-OFFが可能です
アンテナカプラー(チューナー)もオプションです(本体内蔵型)
標準では、WARCバンド 10/18/24MHz対応はなく、オプションの用意があったようですが、本機は標準のままの状態です
IF:8.7MHz プリミックス・タイプ(2.455〜3.455MHzVFO+必要なバンド・クリスタル)のオシレーターで一発バンド変換です
DX対応?としては、RF型のスピーチ・プロセッサが内蔵されています
340w x 140h x 300d  重量約11.5Kg 
余談ですが、電源オプションNBD-515の重量は、約10.5Kgあります

40年を超える選手です
NRD-515と違って、Web上にもほとんど資料が見当たりません
今回、入手したもののトラブルについて
1.メイン・ダイヤルノブで、周波数が変化しない(UpDown-SWでは、正常に変化)
2.1.8MHz帯・14MHz帯で、送信パワーが低下(30〜50Wくらい)が見られる
  3.5/7/21MHz帯では100W、28MHz帯は50Wと、カタログ値が出ている
大きくは、この2点でした
1.については、チェックを進めるとロータリーエンコーダー・ユニットに原因があることが分かりました
エンコーター・ユニットを取り外し、分解して単独で動作をさせてみると、まずTC4049BPが動作不良です
まずは、このICを交換して様子を確認するところからスタートです
他の3つのICは、手持ちがありますので、もしもの時には即対応可です
エンコーダー・ユニット修理後に、2.について取り組みます
単にバンドごとのパワー調整の問題かもしれません(基板を抜いて見ての予測、何せ回路図もない)

メインダイヤルは、NRD-515と同じ100Hzステップのもので、あとの微調はΔFツマミで対応するしかありません(トランシーブ・キャリブレーションに必須です! 昔の400ラインのよう)

受信機 NRD-515、NBD-515と並べて見ました

送受信期間の接続は、最低この2本 トランシーブケーブルとアンテナケーブル
リア・パネルです
受信機 NRD-515との接続は、角型コネクタケーブル1本とアンテナ接続ケーブルのみ
JRCお得意のマザーボードに基板を立てるスタイルです
本気調整には、エクステンション・ボードが必要という、少々厄介な構造です
左端のスペースは、プリセット型アンテナ・カプラCFG-515(オプション)の指定席です
ファイナルユニット部のアップ
特にシールドなどは用意されていませんが、ヒートシンクは一般に思うより大型のものが採用されています(強制空冷なし)
シャーシ底面をフロント側から
一枚基板…マザーボードです
下側ケース リア側
水侵入? 錆びています
基板にも錆びた水が流れたような跡があります
結露かな?
他の保存状況の良くないJRCトランシーバでも、似たような状況を経験したことがありました
フロント・パネルはダイキャスト製ですが、受信機 NRD-515とは異なり、ケース・シャーシは鉄製です
フロント・パネルを取り外して、ロータリー・エンコーダー・ユニットを取り出しての修理です
ご覧のように、フロント・パネルは、難なく?綺麗に取り外せます
取り外したフロン・トパネルの裏面
右上はメーター
中央の円形に見えるのは、今回問題を起こしているロータリー・エンコーダー・ユニットです
取り外したロータリー・エンコーダー・ユニットを分解
結構大変な作業です!

単独で動作をさせて、不良IC(4049)を発見
そのICを取り外して写しました
回転するスリットを挟んで基板2枚の構成
この2枚ををつなぐ配線の取り外しには要注意
下手をすると(力技で取り組むと)基板パターンを切ってしまいます(滅多に分解される方はなさそうですが)
次に見つけた不良個所のひとつは、フォトダイオードそのもの(片側)
使用してあるものの型式が分かりませんし、現在入手できるものも限定的です
昨今、フォトダイオードそのものを目にすることも無くなりました
さんざん探して2種類入手しましたが、使えそうなのはTPS606・・・テスターとデスクライトを使って、事前テストの結果です
TPS606を使って、元の回路で実験したところ思うように動作しません
そこで目的の動作をするよう回路を変更しました
左がオリジナル回路で、右が今回改造後の回路です

4049以外にも2つのIC動作が変!入れ替えてもどうもおかしい
結局、ICソケットを採用して簡単にIC交換ができるようにしました
というのも長期保存していたCMOS-ICに、動作不良品があったようです
改造後、最終動作チェック中の様子です
この形でトラブル対応終了です

エンコーダ本体の高さが高くなる(ケースに収まらない)心配があったのですが、ここはICソケットの採用です
約5mm高くなり、スペーサを用意してφ2.6長尺のビスを用意して、何とか格好にはなりました(アルミカバーの取り付けは出来ました)
まず、ICには惑わされました
交換により、どこかが治ればどこかの動作が変、どうも長期保管品に生じる劣化があったようです(初期のCMOSです)

最初テスターひとつでH/Lをチェックしながらの作業を行ったのですが、処理途中から動作をしていないような状況にしかならないことが分かり、正常なNRD-515のロータリーエンコーダの動作を確認することにしました
改めてテスターでは判断できないことが判明、ここでやっとシンクロスコープの登場となりました
何もかもテスターひとつで解決しようとする、年寄りの性(さが)です、オソマツ!
最初からこうしておけば良かったと反省しかりです(途中で投げ出したくなるくらい時間がかかった、いや半分投げ出したのでここまで時間がかかったというのが実体!)
余談ながら参考にしようとしたNRD-515のフロントパネルの取り外しにはこれまた労力がかかりました
本機のように簡単ではありません
メイン基板を外して、その下にあるフロントパネルを支える3本のスペーサを止めるビスを外さないと目的が達成できないことが分かりました
このことが分かるまでに結構時間を要しました

折角の分解ですから、この際BANDーSWの接点を念入りに掃除しました
ロータリー・エンコーダユニットが、今回の修理で約5mm高く(奥行が長く)なりましたが、ご覧のように基板との隙間にギリギリ収まっています(正直、無理やり!)
本来は、銀色のダイキャスト部がアルミカバーで隠れてしまいます(カバーはスペーサで浮かせて固定している)

今回は、ロータリーエンコーダの修復にずいぶんと手間取りました
パワー低下の見られるバンド対応は、元気が残っていません、力尽きています!
様子からしてBPFの離調のように見受けられますが、基板を持ち上げるエクステンション・ボードがないと、手が付けられません
JST-135用には、たまたまHIROSEのコネクタがあったので自作できましたが、今回はそうはいきません・・・

本機のWARC対応
この大変な取り組みをなさったのは、サンノゼ在住の、AK6AB 藤井OMです
クリスタルの特注はもちろん、BPF基板(3枚必要)まで起こして対応をなさったそうで、その資料をご提供いただきました
お許しをいただきましたのでリンクします
藤井OMですが、JANET(毎週日曜の朝 21.370MHz)に、ご参加だそうです
2025.04   JA4FUQ

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